「原発」は本当に争点なのか

第46回衆議院議員総選挙が公示された。政治と選挙が大好きな身としては、当事者でもないのに血湧き肉躍る一大イベントである。
立候補者が例外なく抽象的、あるいはできもしない美辞麗句を並べ立てるのは毎度のことだが、今回の選挙で疑問を感じる争点のひとつが「原発」だ。実際のところ、どれだけの国民が原発の在り方に関心を持っているのだろうか。
メディアには「“脱原発”を望んでいるのは国民の総意」という論調が目立つが、昨年の大震災以降に各地で行われた地方首長選挙において、「当面は継続」というスタンスの候補者が反原発派の候補をことごとく破ってきたという“民意”はどう説明するのだろうか。
これまでは「地球温暖化阻止」を訴えてきた左翼勢力や政党が、大震災以降は手のひらを返したように「脱(反)原発」を叫んでいるのも奇妙な話だ。代替としての再生可能エネルギーがまだ「論外」である現状下では火力発電所をフル稼働させるしかなく、つまり二酸化炭素を大量に出し続けているというのに…。
この連中は、あたかも原発が稼働するだけで放射線を撒き散らす「殺人兵器」のような印象操作をしているが、ある脱原発候補の関係者からは、「とりあえず脱原発と謳っておけば、正義の味方のような印象を与えられる。候補者自身は原発に関心はないのだが、それが党の方針だから…」という本音を聞いている。
「二度と(福島原発のような)同じ悲劇を繰り返してはならない」
御説ごもっともであり、これに異論はない。だが、(活断層問題は別として)同じような原発事故が再発する可能性があるとすれば、「3.11」級の地震や津波に見舞われるのが大前提のはずで、現にそれで2万人近い死者・行方不明者を出しているのだ。
8月に国の有識者会議が発表した被害想定によると、例えば「南海トラフ地震」がマグニチュード9で発生した場合、死者数は最大で32万3,000人、そのうち津波による死者は全体の7割の23万人に達するという。
「命」という言葉を多用したいなら、ことさら原発だけを目の敵にするのではなく、こうした自然災害対策も同時進行で語るべきだろう。しかし、脱原発論者には「どのみち“天災”には対抗できない。だったら、原発事故が“人災”だったことを槍玉に挙げればB層の票を稼げる」という大衆迎合心理しか感じないのだ。
自民党政権時代も含めて、「衆愚政治」が日本の特徴だ。この総選挙でもその構図は変わらないのだが、与えられた選択肢から選ばなければならない以上、候補者(小選挙区)と政党(比例代表)の政策はよく吟味しなければならない。
ま、それでも結果的に裏切られるんだけどね…。
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カテゴリ : 政治選挙