44歳、オヤジの小言

先日、仕事で外出した帰りに市内のある中華食堂に入った。混んでいたため、テーブル席に一人で座っていたサラリーマン風の若者と相席になった。スーツの着こなしから明らかに新社会人といった感じだったのだが、初々しい気持ちになれなかった。
この不況で就職戦線は買い手市場のはず。いったい面接官は何を基準に彼を採用したのだろう。もっといい人材がゴロゴロしていると思うのだが。
髪は金に近い茶、しかもツンツンに立てていて、指にはファッションリング。更にスラックスを下げて穿いている。今でいう“腰パン”である。本人の自己主張なのだろうが、私が社会に出た頃には考えられなかった出で立ちである。会社側がそれでも良しとするならそれでいいのだろう。ただし、彼が内勤職なのであればの話だ。これが営業職だとしたら、話はそう簡単ではない。
基本的に、様々な人達に会って自社の商品を売り込み、買って頂くのが営業の仕事である。世には星の数ほどの“営業マンのためのハウツー本”が出回っているが、ほとんどの本に共通して書いてあるのが「まずは自分という人間を売り込め」という事だろう。
外見で人を判断することに異を唱える向きもあるが、第一印象というものは人に大きな影響を与える。話した事もない相手の風貌や身なりだけを見て、直感的に好き嫌いの判断をしてしまうというのは、誰もが大なり小なり持っている人間の本能だ。
彼の姿を見て「素晴らしい!気に入った!」と思う人はどのくらいいるのだろう。営業の相手は間違いなく彼より年上だろうし、場合によっては彼の親の世代の人達と渡り合って行かなければならない。このようなファッションにアレルギーを持っている人はかなりの割合で存在するのではないだろうか。かくいう私もその一人である。
食堂での話に戻そう。
その店にはスポーツ新聞をはじめ週刊誌、漫画の単行本などがズラリと並んでいた。この若者は「課長 島耕作」の単行本を熱心に読んでいた。これは自分も読んだ事がある。主人公はマスク良し、仕事はデキる、女にゃモテると三拍子揃った完璧なサラリーマンで、大きなプロジェクトは次々と成功させ、行く先々でいい女と出会い、決まって女の方から惚れられ、ムフフな展開になる。
彼はサラリーマン1年生、これから夢と希望を持って、願わくば島耕作のようになりたいと思っているのかも知れない。まぁ目標を持つのはいいことだが…。
本を読みながら物を食べるという行為の是非は別として、もうひとつ気になったのが、いわゆる“犬食い”をしていたことだ。テーブルに置いたままの食器に顔を近づけ、犬のように食べるアレである。こればかりは生理的に好きになれない。
確かに、外見や食事作法だけで彼の全人格を判断することはできない。だが、これが第一印象として否定的に思われてしまうと、その悪印象を覆すのは大変だ。見た目も大事だが、人を不愉快に思わせないために存在する作法やマナーはもっと大事である。彼自身もそうだが、それ以前に親は何をやっていたんだと思ってしまう。
毎年この時期には、同期入社であろう同僚たちと群れをなし、なにを勘違いしているのかポケットに手を突っ込みながら、くわえタバコで風を切って歩いている新社会人をよく見かける。学校では立場が最上位だったのだろうが、まるでその延長線上に社会があると考えているようで、いつも苦々しく憂鬱な気分になる。
もちろん、それは一部の新社会人の話であり、応援したくなる若者の方が多い。だが、前述のような光景が年々増加しているように思うのは齢のせいか…。
自分のことは棚に上げて批判めいてしまったが、かくいう自身も社会に出た頃には、似たような理由で大人たちから批判されていた。
「まったく、最近の若者は…」という年齢になったと痛感した今日この頃である。
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