永遠も半ばを過ぎた

フリーデザイナー兼カメラマンの苦言・放言・一家言

上っ面だけの「オリ・パラ平等」

2020/04/01(水)


2013年9月にオリンピックの第32回夏季大会の開催地が東京に決定して以来、テレビのニュース番組や新聞あるいは政治家の発言でこのイベントに触れる際、ある一貫性があることにお気付きだろうか。

「東京オリンピック・パラリンピック」(口述時)
「東京五輪・パラ」(活字、字幕スーパー等)

そう、「パラリンピックもちゃんと平等に扱ってまーす」とアピールする表現である。では、例えば直近の2大会でもご丁寧に「リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック」と言ったり「平昌五輪・パラ」と表記していたアナウンサーや新聞はどれだけあっただろうか。

今回は自国開催という理由もあるのだろうが、表現上では両者を平等にしているつもりでも「気持ちは“オリンピック”にしかない」ことが随所に透けて見えている。

いちばん顕著なのはテレビ(特に民放)だろう。昨日付のネットニュースに、大会の1年延期の影響として以下のような記述があった。

テレビ各局が東京五輪に向けて用意していた“特番”がすべて白紙に。7月22日から8月9日までの2週間、ポッカリと空いた番組枠を埋めるため、各局では早急な対策が取られている様子。
(週刊女性PRIME 2020.03.31)


太字で示しているように、民放各局が中継放映枠を確補していたのは7月22日から8月9日までの2週間という“オリンピック期間のみ”であり、つまり「パラリンピックを放映する気など毛頭ない」のだ。

(以下、一部でオリンピック=オリ、パラリンピック=パラ)

では、民放局はなぜパラを扱わないのだろうか。それは言わずもがな「視聴率が取れない」ためで、つまり国民全体が障害者スポーツに興味がないのである。過去の大会において、各競技で活躍した多くの選手をメディアは「国民的ヒーロー」として祭り上げてきたが、そのほぼ全員がオリ選手であり、パラ選手では見たためしがない。

このように、メディアの言動で本心は「パラには興味がない」ことがよく分かるのだが、ではなぜ「東京オリンピック・パラリンピック」と長ったらしい言い方を繰り返すのだろうか。これも言わずもがな「障害者団体や一部の国民からのクレーム回避」に他ならない。

政治もメディアもとにかく「差別」という言葉には過敏だ。日本には在日朝鮮人や被差別部落、あるいはアイヌといった差別問題は数多あるが、「障害者差別」もその一端で、これは日本に限らず忌避されている。

国民がパラリンピックを見たがらないのは、障害者に対する差別意識からなのか、あるいは障害者を「見世物」としていることへの嫌悪感からなのか…。何にせよ、健常者と全く同じ目線では見ていないはずである。

毎夏、日本テレビで放映している「24時間テレビ」は、障害者を「お涙頂戴」仕立てにすることによって視聴者から多額の募金を集める一方で、チャリティ番組なのに出演者には高額なギャラを支払うという姿勢に批判の声は多い。それに、あえて障害者を引っ張り出し、美談を作ることによって社会的使命を果たしていると思わせる手法は、商業的には成功していても完全な「障害者ビジネス」である。

さすがにパラリンピックを利用してそのようなビジネス展開をするわけにもいかず、だからといってパラ大会を中継したところで誰も観ないのであれば、手間も予算もかからない過去の人気ドラマの再放送でもした方がマシなのだろう。

そう公言せずとも、編集権は局側にあるのでパラを放映するしないの判断は自由だ。しかし、大会を表現する時に上っ面だけ「パラリンピック」という単語をセットにして差別批判を回避しようとする思考にメディアの姑息さを感じているのは、私だけだろうか…。

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