やはり呪われていた「日本の五輪」

去る18日、麻生太郎副総理兼財務相は新型コロナの感染拡大で東京五輪の延期や中止が懸念されていたことに関連し、過去には40年周期で日本の五輪関係に問題が起きているとして「呪われたオリンピック」と表現したため、例によってメディアが食いつき大きく取り上げて大バッシングを展開していた。
歯に衣着せぬ発言で知られる麻生氏なので、いつも虎視眈々と「失言」を狙っていた記者連中はさぞ大喜びだったろう。ところで、過去の五輪に関して、日本に何があったのだろう。
・1940年〔東京〕→ 開催権返上(戦争)
・1940年〔札幌〕→ 中止(戦争)
・1980年〔モスクワ〕→ 参加辞退(ソ連情勢で米に追従)
・2020年〔東京〕→ 翌年延期(疫病)
1940年当時の五輪は夏・冬同年開催だったため重複しているが、確かに40年周期で何らかの「異常事態」が起きており、その符合から「まるで呪われているようだ」と感じるのは不自然なことではないだろう。
麻生氏のこの発言時にはまだ「東京五輪の開催の行方は?」という段階だったが、莫大な利権を手にしている利害関係者にとっては「開催強行」しか選択肢はなかったようで、中止や延期論を否定し続けていた。
ところが、12日にアメリカのトランプ大統領が記者団に「1年延期」を提言したのを皮切りに、カナダのオリ・パラ委員会には「今年の開催強行なら選手団を派遣しない」との声明を出されるなど、徐々に外堀を埋められて身動きが取れなくなった昨日、ついに安倍首相とIOCのバッハ会長との間に「1年程度の延期」が合意され、正式に発表された。
私は常々、日本(のメディア)における五輪の「お祭り騒ぎを通り越したバカ騒ぎ」に辟易していることは過去の記事で書いたが、そのせいで東京五輪も招致運動時から国民の一人としては反対の立場だった。
そもそも、五輪の開催単位は「国」ではなく「都市」のはずなのに、なぜか国家(政府)が深く介入して「五輪担当大臣」なるポストまで創設するほどの入れ込みようだ。また、「暑さ対策」という理由でマラソンや競歩の会場が(無理やり)札幌へ変更されるなどもあり、「東京五輪」ならぬ「ニッポン五輪」の様相を呈していた。
招致段階では約8,000億程度のはずだった大会予算はなぜか3兆円にまで膨れ上がり、その内の少なくても8,700億円超もの国税が湯水のごとく使われてきた。そして、この度の延期によって国民は更なる負担を強要される一方、利害関係者の間ではさらなる利権の取り合いやマネーゲームが繰り広げられ続けることになる。
思い起こせば、2015年に発表された大会公式エンブレムがベルギーのデザイナーに「自作のデザインを盗まれた」と訴訟を起こされてデザインを再募集するハメになったり、新国立競技場のデザインが国際コンペによって選出されたものの建設費が当初予算の2倍に膨れ上がったため、これもデザイン変更を余儀なくされたりと、東京五輪はこの頃からミソがつき始めていた。
今後、新型コロナの影響で企業倒産や失業者が続出し、つまり日本経済がかつてないほどの恐慌を迎えるのは必至で、新型コロナによる死者数より「違う理由で死ぬ人間」の数の方が上回る可能性もある。そんな中で開催される延期五輪で、メディアはまた「五輪で日本を元気に!」などという情緒的なスローガンでバカ騒ぎするのだろうが、国民全体が本当の意味で元気になるとは到底思えない。
東京都・政府・組織委員会・大会スポンサー、果ては五輪特需でひと儲けを企む商売人など、欲にまみれた「自分ファースト」な連中が推し進める「平和の祭典」に、果たして未来や希望はあるのだろうか。
やはり「呪われた五輪」だなこりゃ…。
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カテゴリ : 時事社会