デザイナーは「アーティスト」ではない

「広告表現は商売のための表現 自己表現にあらず」
これは、いつも自らへ言い聞かせる戒めの言葉である。コピーライターの仲畑貴志氏が著書に記しされている言葉の要旨だ。
「自己表現」
クリエイターならば誰もが持ち合わせている感覚だろう。もちろん無の状態から作り上げるのだから、ある程度の自己表現をしなければ仕事にならない。問題なのは、それを「自己満足」で完結しようとしてしまうことだ。
己の感性を忠実に表現し、個展などで発表する書道家や画家らの芸術家は、まさに自己表現の世界である。だが、商業広告のデザイナーは「クライアントに依頼され制作する」という、彼らとの決定的な違いがある。つまり、最終目標は「クライアントが気に入る」ことであり、そこには「自己満足」を貫く余地はない。
制作物はあくまで「商品」であり、決して「作品」ではないのだ。
かくいう自身も、「これは自信作!」と勇んでクライアントにプレゼンしたものの、「う~ん…」という反応をされてガックリという経験がある。何しろ十人十色である「感性」に依拠するため、あくまで決定権者の意向に沿って手直しや作り直しをしなければならない。最後には「本当に俺が作ったのか?」と思ってしまうほど「変わり果てた」ことも決して少なくない。
だが、(著作権は別として)商業広告はあくまでも「クライアントのもの」であり、デザイナーの「自己」を貫き通す理由はどこにもないのだ。ただし、デザインに正解はないが、ある程度のセオリーは存在する。クライアントの意向があまりにそれから逸脱した場合には、全力で阻止…ではなく説得することになる(笑)
とはいえ、総じて「アンタに全て任せるよ」というクライアントの方が多く、そういう意味では存分に「自己表現」させて頂くこともある。ただし、結果的に「売れない広告だった」などと言われると目も当てられないのだが…

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