まかり通った「子供は害悪」思想

「ニンビー(NIMBY)症候群」という言葉をご存じだろうか。
“Not In My Back Yard”(自分の裏庭はダメ)の略で、要は「施設の必要性は認めるが、ウチの近所には建てないでくれ」という姿勢や主張を指す言葉だ。
いわゆる「迷惑施設」や「嫌悪施設」と言われるものが対象で、各種処理場、遊技場、刑務所、精神病院、葬儀・火葬場などが代表的だが、「幼稚園・保育園」もそのうちのひとつとされている。
千葉県市川市で今月開園予定だった私立保育園が、近隣住民の「子供の声でうるさくなる」との反対を受け、開園を断念していたことが話題になっている。
待機児童問題が深刻化する中で、新しい保育園の建設を排除する動きと、それに園側が屈したというニュースは大きな反響を呼んでいるようで、世間では総じて住民側の態度に疑問を呈する声が大きいようだ。
反対住民はほとんどが高齢世代のようだが、自身が子供だった頃のこと、自身も子育てをしてきたこと、そして今は自身の孫が幼保園に通っている頃であろうことを考えると「お互い様」という謙虚な気持ちが生まれようものだが、さにあらず。「自分だけは静かな環境で過ごしたい」という我欲を貫き通し、何ら違法性のない健全施設を建設中止に追い込んだ。
子育て経験のない私でさえ、子供たちの元気な遊び声は「心地よいBGM」だと思っているのだが、反対住民にとっては「迷惑な騒音」であり、自身も我が子をその「迷惑施設」に通わせていた過去については「それはそれ」というスタンスのようだ。
日本の未来を担う子供たちを育てる大切な施設(の建設)を潰したという事実は大きな批判の対象になったようで、ネット上では「保育園がダメなら、近々世話になるはずの葬儀屋を誘致してやれ」、「もはや糞尿痰しか生産しない老害は静かな姥捨山で暮らせ!」と容赦ない。
ともあれ、今回のような事例は他にもたくさんあるようだが、もはや「社会で子供を育てる」という意識は消滅しつつあるのかも知れない。そう、基本的に人間は「自己中心主義」を持つ唯一の動物なのだから…。
- 関連記事
-
- 悪しき判例を作った「ファウルボール訴訟」 (2016/05/21)
- 「なんでも自動化」で衰退する運転技術 (2016/04/14)
- まかり通った「子供は害悪」思想 (2016/04/12)
- 傲慢すぎた「弱者ビジネス」 (2016/03/24)
- 日本の「任侠道」はどこへ… (2016/03/21)
カテゴリ : 時事社会