永遠も半ばを過ぎた

フリーデザイナー兼カメラマンの苦言・放言・一家言

傲慢すぎた「弱者ビジネス」

2016/03/24(木)



「交通弱者」という言葉がある。言わずもがな、(自転車も含めた)「歩行者」のことだが、これはあくまで物理的な力学上の話である。

例えば、歩行者の全面的な過失によって車両に轢かれた場合でも、日本では否応なく車両の方が刑事・民事・行政上の責任を問われるので、物理的な弱者は「歩行者」でも、法律的な弱者は「車両」ということになる。

同じ理屈で、身体あるいは知的障害者は「社会的弱者」と言われるが、障害を振りかざして「差別!」という言葉を発しただけで世間は萎縮し、その瞬間に「道徳的強者」へと変身する。そういう意味では健常者の方が「弱者」なのだ。

これを見事に利用・体現してきたのが、デビュー著書「五体不満足」で知られ、次期参院選では自民党公認での出馬が確定的と言われている乙武洋匡だ。

今年は、ベッキー・宮崎謙介・桂文枝・石井竜也など週刊誌報道による著名人の不倫騒動が後を絶たないが、今度は教師や教育委員という「聖職」も務めた乙武までもが不倫をスッパ抜かれ、しかも5人もの女性との関係を認めたというのだから、当然ながら世間は大騒ぎだ。

これで参院選出馬は微妙な状態となったとはいえ、素早く謝罪コメントを出し、あろうことか奥さんにも「自分も悪かった」と謝罪させるという奇策に打って出たことで、「ダメージを最小限に抑えて出馬に踏み切る」という向きもある。比例代表で出れば当選は自動的で、世間もすぐに忘れてくれるからだ。

本来は「不倫」という倫理上の問題であり、障害の有無とは全く無関係な話なのだが、メディアは関連団体からの抗議を恐れて、すぐに収束させることだろう。他の不倫タレントと「平等」に扱えばいいはずなのに、「障害者だから」批判はタブーなのだ。(これこそ、逆の意味での「差別」なのだが…)

しかし、彼の性豪ぶりや倫理観はともかくとして、総体的な人格を考えた場合、およそ「選良」には値しないと言わざるを得ない。

著書の大ヒットにより富と名声を得た乙武は、その後の言動も注目される存在となり、今やツイッターのフォロワー数も80万を超える著名な「文化人」である。だが、いつしか彼は自身の成功に溺れるようになり、「障害」を武器にした傲慢な性格が見え隠れするようにもなった。

その代表例ともいえる事例が、2013年の「レストラン入店拒否騒動」だろう。エレベーターが止まらない2階の店を予約したものの、車椅子であることを事前に伝えていなかったため、当日の店側は介助を事実上拒否した。これに立腹した乙武がツイッターで店名を晒して批判した…というもの。

車椅子の客を「差別」するべきではないが、健常者とは違う配慮という意味で「区別」は必要になる。事前連絡のなかった車椅子を慣れない従業員が抱えて階段を上り、万が一にも転落事故が起きた時の店側の責任は計り知れない。

つまり、店側は「入店」を拒否したのではなく、責任の持てない「介助」を拒否したに過ぎない。しかし、これを「障害者差別」と受け止めた乙武は、自身の発言の影響力を知りながら小さな個人店の実名を晒し、糾弾した。これこそ「弱い者いじめ」である。

乙武は日頃から「障害は不便だけど、不幸ではない」などと繰り返して好感度を上げていったが、いざ今回のようなことがあると「俺を誰だと思ってるんだ!天下の障害者様だぞ!」とばかりに“弱者”を利用してきた。

つまり、彼にとって“障害”とは、人をひれ伏させる「印籠」であり、敵を大量殺戮できる「兵器」であり、カネを生む「商売道具」なのだ。

このような人格なので必然的に“アンチ”は増え、彼のツイッターは頻繁に炎上することになる。それに追い打ちをかける不倫スキャンダルとくれば、当然ながら「五人大満足」、「女体満足」、「妻だけじゃ不満足」「ゲスの極み乙武」などとネット上で容赦なく皮肉られるのは当然の帰結ともいえる。

日本のバリアフリーは決して「完備されている」とはいえない状況だが、それでもこの社会は障害者に配慮し、気を遣っているはずである。それを「当然の権利」と言わんばかりの唯我独尊な態度を、世間では「思い上がり」という。

この不倫騒動は、そんな人格の彼への「天誅」だったのかも知れないし、傲慢な「弱者ビジネス」も終焉の時を迎えた…ということなのかも知れない。

余談だが、例の「入店拒否」について乙武が綴ったブログ文章(体裁は謝罪文)を、謎の「赤ペン先生」が添削指導したことがネット上で再び話題になっているので、ここにも画像を転載してみる。

果たして、「大ベストセラー作家」でもある彼の文章力とは…?

(文中敬称略)


(全6枚、画像クリックで拡大)



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