世論に“征服”された「最優秀作品」

「最優秀賞」を辞退することになった作品 (一部モザイク加工)
オホーツク流氷科学センター(紋別市)が実施した第25回「オホーツクの四季写真コンテスト」で、海岸に打ち上げられいたクジラの死骸の上で男性がガッツポーズしている作品 「征服」 が最優秀賞(道知事賞)に選ばれたものの、ネット上では「命を冒涜している」などと批判が殺到したため、同センターは「該当作品なし」として賞の取り下げを決めたという。
「写真コンテスト」というシロモノは客観的な判断基準などなく、選考委員の感性(好き嫌い)だけで優劣が決まる。写真の評価とは元来そんな程度ものなので、どんな写真が最優秀賞を取ろうと外野があれこれと口を挟むことではない。
…とはいえ、「オホーツクの四季」と題したコンテストの応募作品にしては違和感を感じる写真ではある。では、他にどんな写真が入選したのかというと…
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ほほぉ、いい写真ばかりではないか。では、「征服」が最優秀賞に選ばれた理由は何だったのか。選考委員の一人である北海道写真協会の女性会員は当初、次のような選評をしていたそうだ。
「海岸に流れてきた?クジラに乗ってヤッタゼ!と言った得意のポーズの青年!滅多に見られない作品作りに成功されたと言ってよいでしょう」
なるほど…。“四季”を表現せずとも、「クジラの死骸が転がっている」という滅多にないシャッターチャンスをモノにしたことが評価されたようで、言わば「綺麗な写真」よりも「奇抜な写真」の方が優秀だった…ということなのだろう。
だが、この選考委員は騒動を受け、こうも言っている。
「クジラは生きていると思った。その上に乗っかるなんて勇気があると思ったし、感動したので選んだ」
海岸で仰向けになっているクジラを「生きている」と判断する感性もなかなか個性的だが、先述したように写真コンテストの優劣は選考者の主観だけで決まるので「受賞の是非」はどうでもいいとして、写真そのものに対する個人的感想はというと、ネット上の批判と同様に「強い嫌悪感」である。
クジラだけを写したのであれば、「ある日の海岸の光景」として問題視されなかったのだろうが、死体に乗り上がってガッツボーズ、しかもタイトルが「征服」となれは、低レベルな悪ふざけと言われるのも無理はない。
いわゆる「バカッター写真」がネットで拡散され吊し上げられるように、自己満足ではなく「他人がどう思うか」という視点で“自己検閲”しなければならないという教訓になった騒動ではないだろうか。
曲がりなりにも写真でごはんを食べている立場として「明日は我が身」か…?
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カテゴリ : 時事社会