「ロック」を貫けなかった桑田佳祐

紫綬褒章を「まずは5千円から!」 (合成画像:WOWOW+東スポ)
大晦日、ライブ会場からの中継という形でサザンオールスターズが31年ぶりにNHK紅白歌合戦に出場したが、桑田佳祐がテレビ画面に登場した際の「ちょびヒゲ」姿や、披露した楽曲の歌詞やタイトルについて、放送直後からかなり波紋が広がっていた。
桑田が歌ったのは「ピースとハイライト」。文字だけ見ればどちらもタバコの銘柄なのだが、実は「Peace(平和)」と「High Right(極右)」と解釈させているのだという。また、歌詞については、次のような一文だ。
♪都合のいい大義名分(かいしゃく)で
争いを仕掛けて
裸の王様が牛耳る世は…狂気
“都合のいい大義名分”とは「集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更」のことをいい、“裸の王様が牛耳る世は狂気”というのは「安倍晋三首相が政権を牛耳る日本は狂っている」というメッセージではないか…というものだ。
そして「ちょびヒゲ」は、そんな安倍首相をヒトラーになぞらえているというもので、国際的見地からも「非常識極まりない」という批判の声は少なくなかった。
そう言われると「なるほど」と言いたくなるほど整合性があるようにも思えるが、例えば「ちょびヒゲ」に関しては、「ライブタイトル『ひつじだよ!全員集合!』に合わせた、ドリフターズ加トちゃんへのオマージュ」いう説もあり、桑田自身が話さない限り真意は藪の中だ。
とはいえ、反体制を気取るミュージシャンが、時の政権を揶揄した楽曲を作るのは珍しいことでもなく、表現の自由のひとつとして目くじらを立てることでもないのだろう。しかし桑田は、MC中に決定的な「日本のタブー」を犯してしまった。
まずは次の音声をお聞き頂きたい。
(注:スマホではプレーヤーは表示されません)
桑田は昨年11月、天皇より紫綬褒章が与えられたのだが、改めてファンにその報告を行った様子である。素直に「みんなのおかげで貰えたよ、ありがとう」とだけ言えばいいのに、モノマネで天皇を小馬鹿にし、勲章を「こんなもの」と言わんばかりに無関心を装い、挙げ句に「まずは5千円から」と競売まがいの発言までしてしまったのだ。
本人としては照れ隠しのつもりだったのだろうが、多くの観客の前で天皇に対する不敬を働いたため、ついに右翼が動いた。13日付の東京スポーツによると、「牢人新聞社」は以下のような声明を発表し、抗議活動を開始した。
「我々は表現・言論の自由を潰そうとしているわけではない。ただ、日本人としてやっていいことと悪いことがある。今回の桑田のパフォーマンスは天皇陛下に対する侮辱、国家の尊厳を踏みにじる行為だ」
この団体の素性はともかく、確かに桑田の言動は「やっていいことと悪いこと」の区別ができなかったようで、皇室嫌いの共産党やメディアでさえ触れられない「菊タブー」を簡単に犯してしまった。時代が時代なら不敬罪で投獄されていたほどの大失態だ。
話しぶりからも「(受章が)嬉しくて嬉しくて仕方がない」のは明らかで、またそれを隠そうともしていないものの、桑田はあくまでも「おちゃらけ」にしたいようだ。これによって天皇のみならず、他の受章者たちをも侮辱したことになるのを、58歳にもなる大人が分からないのだろうか…。
ともあれ、この騒動を受けて桑田は、所属事務所との連名で公式に謝罪した。(最下部にも全文転載)
自己表現に対する責任と信念のなさには呆れるが、「俺はロックだぜ」と言っていたのは、抗議や圧力次第で簡単に謝罪・撤回する「ライトなロック」という意味だったらしい。 かっこわる…

サザンオールスターズ年越ライブ2014に関するお詫び
この度、2014年12月に横浜アリーナにて行われた、サザンオールスターズ年越ライブ2014「ひつじだよ!全員集合!」の一部内容について、お詫びとご説明を申し上げます。
このライブに関しましては、メンバー、スタッフ一同一丸となって、お客様に満足していただける最高のエンタテインメントを作り上げるべく、全力を尽くしてまいりました。 そして、その中に、世の中に起きている様々な問題を憂慮し、平和を願う純粋な気持ちを込めました。
また昨年秋、桑田佳祐が、紫綬褒章を賜るという栄誉に浴することができましたことから、ファンの方々に多数お集まりいただけるライブの場をお借りして、紫綬褒章をお披露目させていただき、いつも応援して下さっている皆様への感謝の気持ちをお伝えする場面も作らせていただきました。
その際、感謝の表現方法に充分な配慮が足りず、ジョークを織り込み、紫綬褒章の取り扱いにも不備があった為、不快な思いをされた方もいらっしゃいました。深く反省すると共に、ここに謹んでお詫び申し上げます。
また、紅白歌合戦に出演させて頂いた折のつけ髭は、お客様に楽しんで頂ければという意図であり、他意は全くございません。
また、一昨年のライブで演出の為に使用されたデモなどのニュース映像の内容は、緊張が高まる世界の現状を憂い、平和を希望する意図で使用したものです。
以上、ライブの内容に関しまして、特定の団体や思想等に賛同、反対、あるいは貶めるなどといった意図は全くございません。
毎回、最高のライブを作るよう全力を尽くしておりますが、時として内容や運営に不備もあるかと思います。すべてのお客様にご満足いただき、楽しんでいただけるエンタテインメントを目指して、今後もメンバー、スタッフ一同、たゆまぬ努力をして参る所存です。
今後ともサザンオールスターズを何卒よろしくお願い申し上げます。
株式会社アミューズ
桑田佳祐(サザンオールスターズ)
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カテゴリ : 時事社会