私見:総選挙2014 (嵐過ぎて…)

写真(C) 産経新聞
衆議院議員総選挙が昨日、投開票された。野党第一党の党首の落選、維新の奮闘、次世代の惨敗、共産の躍進など野党勢の戦いぶりが興味深かったが、「与野党」という括りで見た勢力図は解散時とほぼ大差なく、選挙制度上は与党が国民に信任されたことになる。
今日は選挙結果について…というより、この総選挙をめぐるメディア・国民・政党の言動などに対する私見をキーワード別に述べてみたい。
【大義名分】
今回の解散に対し、当初は「消費税増税の先送りを国民に問うため」という解釈もあったが、消費税法には政府が経済状況を見極めて増税の判断をする「景気条項」という付則があり、解散の理由には当たらない。強いて言えば「安倍政権の中間評価」という意味合いの方が強かったのだが、何にせよ05年の「郵政解散」のように明確なワンイシューではなかったのは確かだ。
とはいえ、解散前後の野党や反体制メディアは、まるで流行語大賞でも狙っているかというほど「大義なき解散」を連呼していたが、それはつまり「選挙には反対→現状維持を希望→政権是認」という自己矛盾だったことには最後まで気付いていなかったようだ。
先日のエントリでも述べたように、全方位が納得する解散総選挙などあり得ない。国民感情は別として、時の政府与党が議席加増または政権維持のため戦略的に解散を打つのは自然のことであり、その選挙を象徴するワンイシューが必ずしも必要なわけではない。民主党「大義がない」などという不満は単なる狼狽の表れであり、そして結果がそれを証明してしまった。
【常在戦場】
議員の身分が6年間保障される参議院と違い、いつ解散総選挙があるか分からないという意味で、衆議院では「常在戦場」という言葉がよく使われる。
09年の総選挙で民主党に政権を奪われた自民党は、直後から「政権奪還」を合い言葉に組織を立て直し、次の選挙に備えていたという。一方、12年の総選挙で惨敗して政権を明け渡した民主党はいつまでもショックから立ち直れず、先を見据えた戦略を立てられないまま今回の選挙を迎えた。
解散は往々にして「突然」なもので、前回の選挙から2年も経っていたというのに候補擁立が間に合わない選挙区が続出した。自らの準備不足を棚に上げ、敗戦の弁では「解散から公示までの期間が短かった」などという幼稚な言い訳しかできないのであれば、民主党はもう野党第一党である資格すらない。
【低投票率】
今回の総選挙の確定投票率は全国で52.66%、戦後最低を更新したという。メディア各社はこぞってこれを持ち出し、「これでは民意を反映したとは言えない」として、選挙結果そのものの否定に走った。北海道新聞は「これで正当性ある政府を構成できるのかという疑念」を持ったそうだ。
だが、棄権という行動もある意味では「民意」ではないのか。確かに、有権者の半分が選挙に背を向けるというのは民主国家として異常事態だが、少なくても投票は「権利」であって「義務」ではない。投票しないのは有権者の勝手であり、それは「おまかせ民主主義」を行使したことになる。
「誰にも投票したくない」というケースも多いと思うが、そういう場合は白票を投じることで意思表示すればいい。それにも関わらず投票所に足を運ばないのは、特に30代以下に顕著な「政治や選挙には興味がないし、分からない」という理由によるものがほとんどだ。
若年世代が政治に無関心なのは昔からだが、それだけ「日本が平和で住みやすく、危機を感じない国」ということの証明でもある。だから投票もせず「消費税が上がった。ふざけるな」などと甘ったれた文句を言う国民が育つのだ。民主主義教育と民度の問題でもあるのだが、何にせよ投票率だけで国民の意思を論じるは単純に過ぎる。
【白紙委任】
これもメディアが多用している言葉だが、要は「この選挙結果は国民が白紙委任したわけではない」という論旨で、北海道新聞も本日の社説で同様の主張をしている。大好きな民主党が09年の選挙で大勝して政権交代を果たした時、果たして道新は同じことを書いていただろうか。同じような事象に対して、単なる好き嫌いで論調を使い分けてはいないか。
要は「『暴走』することなく、きちんと国民の声を聞け」ということを言いたいのだろうが、どのような政策でも国民の意志が満場一致することなどあり得ず、だからこそ我が国は「議会制」という間接民主主義を採用しているのだ。国民の代表者たる「代議士」の選挙結果に対して「代議制を否定」するような主張をすること自体、自国の民主制を否定する暴言である。
「サイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)」という言葉があるが、対義語として「ノイジー・マイノリティ(声高な少数派)」がある。原発や集団的自衛権に反対する市民デモなどがこれに当たるが、左翼メディアは逐一これらを取り上げ、「これこそが大多数の民意だ」という印象操作をしてきた。さらに、より多くの国民に選挙された代表者らが与党となり、国会という議決機関を通じて政策を遂行するという至極当然のことに対しても「暴走」という言葉で片付けている。
今回の総選挙で、アベノミクスを筆頭としたこれらの政策が本当に「暴走」なのかどうかを国民に問うた結果、サイレント・マジョリティは改めて与党を勝たせたのである。また、前項でも述べたように「棄権」もひとつの民意であり、それこそ「白紙委任」という意思表示をしたことに他ならない。メディアが選挙結果に不満なのは理解できるが、言っていることは「論理破綻した難癖」だということは自覚したほうがいい。
【日の丸】
投票前日の13日、赤旗の記者が次のようなツイートをした。
赤旗政治記者 @akahataseiji
安倍首相は東京・秋葉原駅前で最後の街頭演説。
陣営の運動員が日の丸の小旗を聴衆に配り、安倍首相が声を張り上げるたびに大きく振られた。 異様な光景となる。 (→ 画像)
赤旗政治記者 @akahataseiji
安倍首相の街宣風景の写真に「国旗を振って何が悪い」との反応も。
だが、こういう全体主義の時代があったことは知っておいたほうがいい。(→ 画像)
日本人が日本国旗を振っている様が異様に見えるという典型的な左翼思想だが、選挙の時はどの国でもやっていること。未だに日の丸を戦争と結びつけて嫌悪するというアイデンティティには呆れるしかないが、そんなに日本が嫌いなら「“日本”共産党」という名称も変えたらいかがだろうか。
世界中の国家は戦争の際、国威発揚のために国旗掲揚するのが当然で、日本も例外ではなかっただけのこと。何も戦争のために日の丸と君が代が作られたわけではなく、戦争時に「使用された」に過ぎない。それを分かっていて、なぜここまで自国旗を忌み嫌うのだろう。「赤旗以外は旗にあらず」なのか、あるいは旗ではなく「ゲバ棒」だったら満足なのか…。
何にせよ、共産党が全体主義を批判する自己矛盾…よく分かりません(笑)
【右傾化】
この選挙結果を受け、韓国の主要各紙では日本の右傾化を懸念する論調が大半なのだという。産経新聞前ソウル支局長の起訴など、政府からメディア、国民に至るまで日本の保守勢力に敵意むき出しなのが現在の韓国だが、案の定という反応である。
日本の領土を軍事侵略している国民皆兵の極右国が他国の右傾化を心配するとは片腹痛いが、国家政策として御用メディアが代行しているいつものプロパガンダだ。世界的な価値観で考えれば、自民党のイデオロギーなど「ど真ん中」で、右傾化という言葉が適切なのは「維新政党新風」と「次世代の党」が議席の2/3を取った時ぐらいのものだ。
かつての民主党政権が左に寄り過ぎていたため、その反動として右に感じるだけだろう。それに、解散前の議席数と比較すると「自民→微減、次世代→激減、民主→微増、共産→躍進」ということになり、むしろ国会勢力はかなり左傾化したことになる。現政権を「右」と断じるのなら、そもそも日本の民意をそういう方向へ向かわせたのは誰なのか、よく考えるべきだろう。
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カテゴリ : 政治選挙