奏効しない「アナウンス効果」

衆院総選挙の公示後、共同通信などが何度か全国世論調査を行っているが、自民党の「300議席超」やら「単独3分の2」などという情勢予測は変化がなく、写真の北海道新聞など左翼新聞は文面からも落胆の色が見える。
この類の報道は、有権者への情報提供として必要な側面もあるが、反政府メディアにとっては「与党潰し」を狙うという側面もある。つまり、圧勝予測をすることで与党候補の慢心や気の緩み、あるいは有権者の「判官びいき」を誘い、暗に野党への投票を呼びかけるというものだ。
選挙では、しばしば「アナウンス効果」を期待する報道がされるが、これは主に「勝ち馬に乗る【バンドワゴン効果】」と、先述した「判官びいきを誘う【アンダードッグ効果】」に大別される。そして、メディアの期待が後者であるものの、実際の投票行動は前者になってしまうか、「自分の一票は大勢に影響がない」と判断して棄権してしまうことが多い。
なぜか―。答えは簡単、現在の選挙制度が「小選挙区制だから」である。
1993年の総選挙まで採用していた中選挙区制であれば、各選挙区で同じ政党から複数人が立候補でき、「上位◎名」として複数人が当選できるため、例えば「Aはトップ当選確実、Bは当落線上」という予測が出た時のAの支持者は「Aが確実だったら俺はBに入れてやるか」という気持ちが生まれやすい。
一方、小選挙区制は各選挙区で1名しか当選できず、候補者というより政党に投票する意味合いが強いため、前述のような現象は起きにくい。「苦戦している候補に入れても死票になってしまう」という意識が働き、「ならば勝ち馬に…」と考えるのだ。有権者は「勝ってほしい候補」に一票を投じるのだから当然である。
アンダードッグ効果が見込まれない中で道新は、この公示中になりふり構わぬ「選挙運動」を展開している。社会面を大きく割き、アベノミクス・集団的自衛権・原発再稼働・特定秘密保護法などの政府政策を「悪」として取り上げ、一般人をダシにして感情に訴えるという露骨な印象操作によって「だから与党には投票するな」と読者にクギを刺しているのだ。
それは「読者の声」欄も同様だ。採用するのは政府与党批判の意見ばかりで、「私は集団的自衛権に賛成です」などという民意はゴミ箱へ直行である。幅広い意見を紹介するのではなく、読者という「他人」に己の主張を代弁させているだけなのだが、これはメディアの常套手段。その象徴が、テレビや新聞に登場する「有識者」で、自らの責任を回避できる便利な存在なのだ。
とはいえ、「では、どこ(誰)に入れるのか」となると他に選択肢がないのも事実。立候補者数を考えると、自民党のライバルになり得るのはやはり民主党くらいなものだが、あまりに無知で幼稚な政権運営によって国民は「地獄を見た」のだ。その記憶が消えることはなく、結局は「民主党よりずっとマシ」という消極的な理由によって自民党を支持する国民はかなり多いはずだ。
09年の総選挙時の民主党圧勝予測を報じた道新のハシャギっぷりは凄まじかったが、前回も今回も明らかに意気消沈している文面だ。放送法により、テレビには政治的な公平中立・客観報道が義務づけられているが、新聞にそういう縛りはない。もう「不偏不党」という偽りの看板は下ろして「民主党応援団」を社是として掲げてみたらどうだろう。気持ちが解放されると思うのだが…(笑)
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カテゴリ : 報道誹議