延長50回…審判員の「掟破り」

写真(C) The Huffington Post
第59回全国高校軟式野球選手権の準決勝で、崇徳(西中国・広島)と中京(東海・岐阜)が延長50回という死闘を繰り広げたことが大きな話題となった。
特に中京の松井大河投手が、7日間4試合で75回、計1,000球を超える投球をしたことに対して一部の言論者が「これは残酷ショー。高野連は対策を」などと大会規程のあり方を批判している。
高野連では延長15回で決着がつかなかった場合、硬式は再試合、軟式はサスペンデッド(一時停止)試合とする規程になっている。つまり、軟式では再開後の初回で決着がつく可能性もあり、一から試合をやり直す硬式より負担は少ないことになる。
ところが、スポーツ報知の記事(8月31日付)には次のような記述があった。
「日本高野連の竹中雅彦事務局長(59)は30日、今回の試合を受け「サスペンデッドゲームの限界が見えた気がする。(硬式の甲子園大会より)軟式で先に導入するべきという意見が出てくることが予想される」と、延長戦でのタイブレーク制導入を検討することを明かした」
この試合をキッカケに、もともと反対意見の多いタイブレーク制導入の可能性を示唆しているわけだが、これほどの長丁場になる試合など100年に一度もない稀有なケース。たった一度の奇跡的な事例を理由に大会規程を簡単に変えてしまうのはいかがなものか。
どんな規程にも必ず「理由」があるはずで、それを変えなければならない要因に当たるケースとは思えず、言い換えれば「選手の健康を考慮していない」という批判を恐れる高野連の事なかれ主義に他ならない。
※参考記事 → 「事件発生 → 『規制します!』(キリッ)」
何にせよ、タイブレーク制はまだ「検討の余地あり」という段階に過ぎないが、無責任な世間の批判に流されやすいのは大企業や自治体などにも多々見受けられる風潮だ。「毅然」という言葉は死語になりつつあるのだろうか…。
◇
ところで、この延長50回という死闘、サスペンデッドで4日間かけて行われたわけだが、同一試合のため、一度ベンチに下がった選手は二度と試合に出られないのがルール。ところが、審判員は「人員変更」というルール破りをしたようだ。
「公認野球規則」には、次のような条文がある。
9.02 審判員の裁定
(d) 試合中、審判員の変更は認められない。ただし、病気または負傷のため、変更の必要が生じた場合はこの限りではない。
試合中の審判員の変更理由は「病気または負傷」以外には認められていない。もちろん、4日間におよぶサスペンデッドは想定外だったろうが、それは選手たちも同じはずだ。だが、選手にだけルール適用を強要し、審判員だけが「疲れたから」「翌日に用があった」などの理由で交代したのだとすれば論外である。
審判員の変更が認められない理由は、特に球審の「ストライクゾーンが変わる」ためではないかと考えられる。ゾーンとして一定の基準はあるが、実状は「十人十色」である。双方のチームにとって条件は同じとはいえ、試合の途中からゾーンが変わるようでは投手はたまったものではない。
ともあれ、審判交代に関する疑問の声はどこからも上がっていないようだが、高野連はタイブレーク制の検討よりも、この「掟破り」の方を問題視してほしいものだ。審判員が自らを律しないで、何が「ルールの番人」なのかと…。
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カテゴリ : 時事社会