焼け太りJALの「自業自得」

2019年度より新機種を導入する政府専用機の整備委託会社が、現在の日本航空(以下、JAL)からANAホールディングス(以下、ANA)に変更されることになった。(最後部に報道記事)
私はANAとは何の利害関係もないのだが、このニュースは個人的に朗報で、我が事のように嬉しい。ANAには心から「おめでとう」と言いたい気分だ。
若かりし頃のツアーコンダクター時代、ANAにもJALにも幾度となく乗ったが、企業体質の違いをイヤと言うほど見せつけられた経験がある。(…と言っても、組織内部のことは分かるはずもなく、あくまで「サービス」という意味だが…)
もともと半官半民で設立されたJALは、歴代社長が国土交通省(運輸省)からの天下りという状態が長らく続いた。経営陣はもちろん、CAやパーサーなどのサービス部門にさえ「親方日の丸」体質が骨の髄まで染みついていたようで、「乗せてやっている」という態度を隠そうともしていなかった。
赤字計上しても国が無条件で助けてくれたために危機感がなく、ついには破綻の憂き目に遭っても最後まで国に守られた。しかも、会社更生法の手続き完了から7年間は欠損金が、9年間は法人税が免除されるというオマケも…。
公的支援による「焼け太り」となったJALはそれでも満足せず、昨年は今春増加した羽田空港の国際線発着枠をめぐりANAとの均等配分を要求していた。だが、JALの経営再建により両社の財務体質に格差が生じ、是正のために政府主導でANAに傾斜配分した際は「到底承服できない」と猛反発していた。
国民の血税で助けられたにも関わらず、己は所得税を免除してもらって利益はジャブジャブ、それでも飽き足らずに権利を主張する傲慢さは昔から何も変わっていない。今回の政府決定は、そうした背景も念頭にあった可能性は高い。
一方のANAは、「万年2番手」(JAL側は「二流」と言っていた)という自負からなのかサービス面にも企業努力が垣間見え、特に予期せぬトラブル事案の際の迅速な処理は圧巻で、温室育ちのJALにはとても真似できないであろう芸当を目の当たりにしたことがある。
以来、ANAの大ファンになり、個人的な航空機利用は必ずANAを選んでいる。JALは「驕れる者は久しからず」という言葉をよく噛みしめた方がいい。
次期政府専用機にB777 整備担う全日空「全力で」
政府は12日、関係省庁による政府専用機検討委員会(委員長・杉田和博官房副長官)を首相官邸で開き、天皇陛下や首相の外国訪問などに使う政府専用機の後継機を米ボーイング社の「777-300ER」に正式に決めた。日本航空とANAホールディングス(HD)が争った機体の整備業務はANAに委託する。ANAが政府専用機の整備を担うのは初めて。
政府は現在、ボーイング「747-400」を2機保有する。1987年に導入を閣議決定し、93年から運航を開始したが、導入から既に20年以上がたち、燃費の悪さや老朽化が目立ってきた。整備を担う日航だけでなくANAも同型機を全て退役させたため、政府は新たな機体の選定を検討してきた。
選定は政府が提示した政府専用機の必要な性能を満たす機体、乗組員の教育や機体の整備などをパッケージとして募集。日航とANAがそれぞれボーイングの「777-300ER」の機体を柱とした提案書を6月に提出した。最終的に国内で同型機を多く保有し、経費を安く抑えられる点などを評価し、ANAの提案を採用した。
後継機は現行の「747-400」より燃費が約3割向上。現行機は2階建てのいわゆる「ジャンボ」だが、後継機は1階建てとなり、座席数は現行機の約150席よりやや少なくなる見込み。政府専用機に必要な貴賓室をはじめ、会議や記者会見のためのスペースなどを設置して2019年度から運航を始める。
政府専用機はトラブルに備え2機を一緒に飛ばす。後継機も2機導入することになっており、費用は約850億円。14年度予算に関連予算を計上している。秋にも契約を結ぶ予定だ。
機体の提案はボーイング機のみだったため、選定の焦点は整備をどこに委託するかだった。今回初めてANAが整備を担うと決定。機内の食事のケータリング(仕出し)や空港での離着陸時の乗降といった運航支援業務も同社に移る可能性が高い。商社関係者は「首相が航空機から降りる際のタラップに、常にその会社のロゴが映るため宣伝効果も大きい」と指摘する。
ANA HDの伊東信一郎社長は「責任を全うすべく、全社を挙げて取り組む」とのコメントを発表。日航は「非常に残念だ」と話している。
(日本経済新聞 2014.08.12)
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カテゴリ : 経済産業