トップの資質(マクドナルド編)

中国の使用期限切れ鶏肉問題で、今まさに注目を浴びている日本マクドナルドホールディングスだが、本日発表した6月中間連結決算で前年同期比6割減という大幅な減収減益だったようだ。(最後部に報道記事)
日本の外食産業の中で、マクドナルド(以下、マック)ほど迷走を繰り返している会社も珍しいのではないだろうか。
ハンバーガー65円という価格破壊で売上拡大→安売りイメージがつき客離れによる業績悪化、高級業態「マックダイニング」の失敗、賃金未払いなど労働問題多発、高級メニュー「マックグラン」の失敗、マック難民問題、「マックカフェ」失敗、500店舗閉店、メニュー撤去騒動、そして60秒ルール騒動など…。
同社の業績は右肩下がりを続けているが、ハンバーガー単品で400円、セットメニューで700円という価格帯は、もはやファストフードではない。それ以下の価格でドリンク・スープ飲み放題付きの定食などが数々ある時代に…である。
その昔、牛丼の吉野家のキャッチコピーは「安い、早い、うまい」(順不同)だったが、なぞらえて今のマックに対する「高い、汚い、まずい」との声はトップに届いているのだろうか。社内のプレゼンで試食しているものと、現場で出されているものが全く別物だということに気付いているのだろうか。
各種のキャンペーンバーガーも時間と金をかけて開発して生産ラインを作ったと思うが、どれもこれも長続きしなかったようで、整備投資はペイしなかったと思われる。だが、これら「高級路線」の数々の失敗は、そもそも自社の購買層すらリサーチしていなかった「経営判断」の結果だろう。
それでいて商品の中身はといえば、化学調味料・食品添加物・防腐剤・合成着色料・軟化剤・防臭剤・人工香料・合成甘味料・トランス脂肪酸・アクリルアミド・合成粘着剤・合成保存料・染料・アクリルアミド・PhIP(発癌性物質)などで構成され、さらに塩分・糖分・高カロリーで味を調えた、いわば「殺人メニュー」である。
マックの商品は誰がどう見ても「薄利多売」の性質のもので、高い金を払って食べるものではない。所詮は「ジャンクフード屋」だという自覚が経営陣(特に前社長の原田泳幸氏)になく、己の立ち位置を見誤った結果が今の凋落の要因なのだろう。「トップの資質」が問われる典型例だ。
マック中間決算は減収減益、鶏肉問題で通期予想は「白紙」に カサノバ社長が陳謝
日本マクドナルドホールディングス(HD)が29日発表した6月中間連結決算は、最終利益が前年同期比59.4%減の18億円となる大幅な減収減益決算となった。サラ・カサノバ社長による新体制となったものの、業績改善策がいずれも不発だった。
さらに、このほど起きた中国の使用期限切れ鶏肉問題のため、今後の売上高減少が見込まれることや、信用回復のための投資が必要になるためとして、通期の業績予想を未定にした。
同日、カサノバ社長は会見の冒頭で、鶏肉問題で、「お客さまに大きな心配をかけることになってしまった。また、チキン商品をすべてタイ製品に切り替えたことで、店舗で提供できないものもでており、ご迷惑をかけている」と謝罪した。今後は顧客に安心してもらえるよう、仕入れた食材の最終加工国や原産国を公開することも明らかにした。
中間決算の売上高は前年同期比6.7%減の1,210億円、営業利益は同50.3%減の35億円だった。
(産経新聞 2014.07.29)
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カテゴリ : 経済産業