トップの資質(スカイマーク編)

スカイマークが6機も導入予定だった「エアバスA380」
エアバスの超大型旅客機「A380」を6機導入する予定だったスカイマークが、「資金調達のメドが立たない」ことを理由にエアバスから契約解除を通告され、約700億円の違約金を支払う事態になりそうだ。(最後部に報道記事)
「ミニスカCA」や「サービスしません宣言」(後述)、運航面では滑走路の進入ミスや飛行経路を逸脱するなど、経済ニュースでの「毎度お騒がせ社長」率いるスカイマーク(以下、スカイ)が、またやらかした。しかも今回は、会社の存亡にも関わる事態である。
資本金140億・昨年度の売上900億・営業利益50億・時価総額200億(本日終値)の会社が、身の丈に合わない超大型機6機・計2,000億円の契約をしたこと自体が「無謀な成金根性」と批判されていたのに、案の定の結果になってしまった。(契約したエアバスの与信管理能力も疑問だが…)
A380の導入は国際線への参入が理由だが、区間客数が世界最大の「東京-札幌」というドル箱路線での活用も考えていたようだ。パイロットも整備士も不足しているため「一度にたくさん運ぼう」という思惑だったのだろうか…。
しかし、今は「高燃費の中型機で柔軟に高頻度運航」する時代だからこそ、国内2大キャリア(ANAとJAL)は国内線におけるボーイング747(ジャンボ)を廃止したのに、スカイはその流れに逆行する機種を6機も仕入れようとした。
航空利用者の多くは「安全と快適」を求めている。「大手より安い」という理由だけで客がわんさと寄ってくるわけではないのはこれまでの経営で分かっているはずだが、このような「巨艦」を6機も導入してペイすると本気で考えていたのなら、あまりに軽率な経営判断だということは素人の私でも分かる。
スカイといえば、2年前に「サービスしません宣言」で話題になったが、要は「荷物収納を手伝いません」「敬語は使いません」「服装・化粧の制限はしません」「苦情はCAではなく消費者センターへ」などという、(日本的文化の中では)客を客とも思わない強気な姿勢だった。
特に国際線では10時間以上も閉じ込められる機内で、いくら安くてもこのようなスタンスのエアラインに客が殺到するとは思えない。そもそも、国内2大キャリアの国際線も方法によってはスカイと大差ない価格で買えるのだ。
また、昨年は「ミニスカCA」も話題になったが、雑誌のヘアヌード写真すら許されていなかったウブな時代じゃあるまいし、ミニスカで客を呼べると思っているのも時代を錯誤している。
それ以前に、安全上の理由により風邪を引いた乗務員の交代を要請した機長を解雇した会社の飛行機になど、個人的には乗りたくない。
今回の騒動は様々な方向で社長が判断を見誤った、当然の結果なのだろう。「社長は御輿」という会社も多々あるが、ワンマン社長ならば当然に「資質があってナンボ」のはずだが…。
スカイマークのA380契約 甘い経営判断
スカイマークがエアバスから超大型旅客機「A380」の購入契約の解除を通告された。最大の要因は、スカイマークの「資金調達能力(の低さ)」(西久保慎一社長)だ。円安に伴う燃料費の高騰を運賃に転嫁しきれず、平成26年3月期決算も5年ぶりの最終赤字。西久保社長は記者会見で「どれだけ資金を調達できるのか不透明だったところにエアバスは不安感を持っていた」と指摘した。
この結果、肝いりだった国際線参入は文字通りの路線変更を余儀なくされる。当初はA380の1機目を10月に受け取り、12月にも同社初の国際線路線として成田-ニューヨーク線に就航させる計画だった。今後は、導入済みのエアバスの中型機「A330」を使いシンガポールやハワイなどへの路線展開を模索する。
新興勢力のスカイマークは、国内2大航空会社である日本航空やANAホールディングスに比べ、経営規模や資金力で大きく見劣りする。1機当たり300億円程度とされる超大型旅客機を6機も購入する経営判断には、以前から「身の丈以上」との指摘もあった。そこに、円安によるコスト増という想定外の事態が重なる。西久保社長は「環境変化を甘く見ていた」と認めざるを得なかった。
スカイマークはエアバスとの関係修復を急ぎたいとしているが、先行きは厳しい。スカイマークは6機の購入代金の前払いとして265億円をエアバスに納めたが「(手元に)戻る可能性はかなり薄い」(西久保社長)といい、特別損失として計上される公算が大きい。
さらに今後は、エアバスから違約金の支払いを求めて損害賠償訴訟を起こされる可能性もある。スカイマーク関係者は約700億円の違約金を求められる恐れを示唆しており、経営への影響が懸念されそうだ。
スカイマークは、割安な運賃を売りに国内路線を広げてきた。「ウチがなくなると(日本の)航空業界は10年前に戻ってしまう」。会見の最後で西久保社長はこう声を振り絞り、経営の自主性確保への意欲を強調したが、その視界は開けていない。
(産経新聞 2014.07.30)
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カテゴリ : 経済産業