個人情報という「モンスター」

ベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件で、同社と契約している保護者らは怒りが収まらないらしい。(最後部に報道記事)
昨今は教育現場で「モンスターペアレント」なる生物が増殖しているようだが、(私に言わせれば)この程度のことで憤慨したり、(どこかの国じゃあるまいし)謝罪と賠償を要求する動きがあるのなら、その親たちも十分に「モンスター」の資質ありで、度量の狭さと余裕のなさに呆れるばかりだ。
ベネッセが発表している通り、流出した個人情報がクレジットカード番号や口座番号などではなく住所・氏名・電話番号という「電話帳に記載されている程度のもの」であれば、目くじらを立てるほどのことではない。それ以前に、こういう名簿や情報は「漏れているもの」と考えておくのが常識だろう。
もちろん、情報漏洩した犯人がいちばん攻められるべきであり、ベネッセも管理責任を問われるのは当然なのだが、この事件の影響によって被ると考えられるのは「知らない業者からDMが届く」程度であり、「損害」というより「迷惑」の範疇である。
情報として高値で売られるのは、あくまで数十~数百万件分がリストされた「名簿」の状態であり、一般人個々の住所氏名などチリほどの価値もない。著名人でもあるまいし、この親たちは自分を何様と勘違いしているのか。
ちなみに、事件発覚後のNHKニュースで「個人情報には特に気をつけてる」という母子が登場し、画面に顔と名前と年齢を晒しながら「怖いですよね~。ベネッセに裏切られた気分!」などとインタビューに答えていたのを見て、「個人情報っていったい何なんだ?」と思わずにはいられなかった。
何にせよ、最近は「個人情報」という言葉自体がモンスター化しており、誰もかれもが過剰反応すぎる。それほど己の情報を隠したいのなら、自宅に掲げている表札も撤去すべき…という理屈になるし、心配していたら際限がない。
テレビニュースなどで、資料映像的に人々が街中を行き交うシーンが流されることがあるが、もちろん無許可である。だが、個人が同じような画を撮ってネットに上げようものなら袋叩きにあうだろう。これは海水浴場でも同様で、メディアは特権のように撮影しているが、素人がそれをすると逮捕される。
よく「世知辛い世の中になった」と言われるが、その最大の元凶が「個人情報保護法」なのではないかと考えてしまう。本当に嫌な世の中になったものだ。
ベネッセ情報流出 「わび状一枚で済ますのか」 保護者に怒りと不安
ベネッセコーポレーションの顧客情報を流出させた疑いでシステムエンジニアの男(39)が逮捕された17日、同社と契約する保護者らはずさんな管理体制に改めて怒りを口にした。データが悪用される不安はぬぐえず、「子どもの情報が出回るのは気持ち悪い」との声も漏れた。
「有名企業だから、個人情報はしっかり管理しているだろうと信じていたのに裏切られた」。小学1年の長男(6)がベネッセの通信講座「こどもちゃれんじ」を受講する東京都杉並区の主婦(32)は憤った。
情報流出が明らかになって6日後の15日、同社からわび状が届いた。親子の氏名や住所、長男の生年月日などが漏れたと書かれていたが、補償に関する記載はなし。「紙切れ一枚で済ますのか。長男は教材を楽しみにしているが、抗議の意思を示すため退会するつもりです」と話す。
(産経デジタル 2014.07.17)
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カテゴリ : 時事社会