北方領土は返ってこない

ベルギー・ブリュッセルで開かれていたG7(先進7ヵ国首脳会議)が日本時間の昨夜、閉幕した。ウクライナ情勢に対する批判からロシアを除外して行われ、かつ首脳宣言では「(ロシアへの)追加制裁の可能性」に言及した。
とはいえ、今秋に予定されているプーチン大統領の訪日を控え、北方領土問題の交渉を前進させたい日本としては、追加制裁に積極的な米国に追従できない「板挟み」状態である。返還交渉というカードはロシアが主導権を持つうえ、日本の対応によっては「訪日中止」もチラつかせて右往左往させるなど、駆け引きはやはり向こうの方が一枚上手のようだ。
北方領土に関して、日本政府が目指す「4島返還」の非現実性、そしてこれまでの返還交渉が茶番にしか見えないということは過去の記事で詳しく書いたが、「世界の中でのロシア」の立ち位置、そして「ロシアの立場」に立って考えると、どうあがいても「北方領土(4島)は返ってこない」と結論づけるしかない。
世界には「対米核抑止力」という観点から大きく4つのレベルに分けられている。詳しくは割愛するが、要は「米国から全面核攻撃を受けた」と仮定した場合、現存兵器での迎撃によって互いに壊滅状態にさせる能力(相互確証破壊)を持つ唯一無二の国がロシアである。
「人類みな兄弟」「話せば分かり合える」など性善説による平和ボケな日本人にはピンとこないかも知れないが、外交(=国益)というものは原則として、軍事力を背景に行われるもの。そして、ロシアにとって北方領土周辺海域は、相互確証破壊を維持するための「絶対に譲れない砦」なのだ。
北方領土を含む千島列島に囲まれたオホーツク海は、敵側(米国)の攻撃用原子力潜水艦がロシア領海内に侵入できる、またはそれを阻むことができる唯一の「聖域」である。つまり、北方領土を日本に明け渡すということは、これまで米軍艦の侵入を阻んできた海域を無防備にすることであり、相互確証破壊という「国力」をも自ら放棄することに他ならない。
つまり、ロシアが現在の安全保障体制を壊してまで日本に北方領土(4島)を明け渡すことなど、とうてい考えられないのだ。ロシアがそれを通告しないのは、交渉の余地が残っていると思わせ続ける方がはるかにメリットが大きいからであり、いいように踊らされているということだ。ただし、歯舞諸島と色丹島という2島の海域に軍事的影響はほとんどないため、交渉次第で返還の可能性は「ゼロではない」だろう。
中韓のために国を売ろうとした民主党政権時(特に鳩山、菅)の日本は例外としても、万国が自国の利益を最優先するのは当然である。世界では小さな紛争が尽きることはないが、大国が軍事力を背景に「自国の利益」のために牽制し合っているからこそ抑止力が働き、かろうじて秩序が保たれているに過ぎない。
日本のメディアや市民団体などは領土問題になると「元島民の想い」や「固有の領土」という“日本式正論”を持ち出すが、ロシアにとっては何の役にも立たない返還根拠だ。そろそろ現実と本質を直視した国家論を語ってほしいものだが…。
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カテゴリ : 国際時事