What is 国際人?

東京都の舛添知事によると、2020年の東京五輪に大挙して来日するであろう観光客と会話ができるよう、全都民が英語を話せるようになるのが望ましいのだそうだ。(最後部に報道記事)
この年代に多い「欧米(英語)コンプレックス」丸出しの考え方で、英語さえ話せれば全人類と意思疎通できるとでも思っているのだろうか。
日本では社内公用語を英語にする企業が出てきたり、小学校では英語授業が必修化されるなど、「このグローバリズムの時代、英語ができなければ世界の潮流から取り残され、国際人として恥ずかしい」などと不安を煽る傾向にある。
では、いったい「国際人」とは何なのか…。英語がペラペラなら国際人なのか、ならば英語を母国語にしている人たちはみな国際人なのか。ちなみに、日本人が言う「国際人」という概念の英単語はない。英語教育の推進のために作られたこの言葉ほど胡散臭いものはない。
かの福澤諭吉は「学問のすゝめ」で、こんなことを言っている。
或いは書生が「日本の言語は不便利にして文章も演説も出来ぬゆえ,英語を使い英文を用いる」なぞと,取るにも足らぬ馬鹿を言う者あり。按ずるにこの書生は日本に生れて未だ十分に日本語を用いたることなき男ならん。国の言葉は、その国に事物の繁多なる割合に従って次第に増加し,毫も不自由なき筈のものなり。何はさておき、今の日本人は今の日本語を巧みに用いて弁舌の上達せんことを勉むべきなり。
このように、すでに明治時代に言い尽くされている。必要のない人間が無理に英語を覚えるくらいなら、もっと日本語や日本文化を勉強すべきである。
分かりやすく例えてみよう。
イギリスに住むマイケルが日本の文化を勉強するため来日した。まもなく、日本の歴史や文化に精通している太郎と知り合った。だが、太郎は英語が全く話せないため、友人で帰国子女の花子に通訳を頼んだ。つまり、太郎はマイケルに対し、花子の英語を通じて日本文化を詳しく教えてあげたのだ。マイケルはとても喜んでいたという。
「日本」を知りたいマイケルにとって、太郎と花子のどちらがいわゆる「国際人」なのか、言わずもがなである。
ところが、文科省が率先して的外れな英語教育を推し進めている影響からか、現在の英会話ビジネスは漫然とした不安を利用している。これは資格や自己啓発、あるいはダイエット産業も同様で、人々の不安を煽って刹那の安心を売り、保証できない未来を約束するという「宗教」の構図そっくりだ。
大切なのは言語よりも「コミュニケーション能力」と「日本人としてのアイデンティティ」なのだと理解される日は…来ないんだろうな

舛添知事「全都民が英語しゃべれ」
2020年東京五輪に向け、ロシア・ソチ冬季五輪を視察した東京都の舛添要一知事が25日帰国し、成田空港で報道陣に「治安対策とか演出の仕方とかいろいろ見えてきた。これからの参考になる」と感想を語った。
一方で「(現地では)ロシア語以外、通じなかった」と課題を指摘。「言葉のバリアーをどうするか。片言でいいから全東京都民が英語をしゃべれるぐらいになればと思う」と述べた。知事は21日に日本を出発し、現地では警備態勢や交通、輸送の状況を確認。国際オリンピック委員会のバッハ会長と初めて会談した。
(デイリースポーツ 2014.02.26)
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カテゴリ : 時事社会