永遠も半ばを過ぎた

フリーデザイナー兼カメラマンの苦言・放言・一家言

呆れた「お涙頂戴」記者会見

2014/04/11(金)

写真(C)朝日新聞

「やっぱり日本人は“感動”に弱い、情緒的な国民性なんだなぁ…」

去る9日に行われた、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダー(30)の記者会見と、その後の大衆の反応を(報道で)見聞きしての個人的感想である。

科学的な理論と証拠で疑惑を晴らさなければならない立場にも関わらず、「STAP細胞はあります!」と主張しながらも証拠の一切を「公表しない」とし、一方で不正論文に関しては「未熟だったのだから、もう許して」とばかりに訴えた。

科学研究者としての資質や倫理、また日本の科学技術に対する世界からの不信という「本質論」を、涙ながらに訴える「感情論」にすり替え、会見場の記者の誰もが「納得できなかった」という無意味な会見を乗り切ったのである。

その後の反響は大きく、「よく頑張った」「健気だった」「可哀想に…」「オボちゃんかわいいっ♪」など、世間には小保方氏に同情的・好意的な印象を抱く声が溢れたようだ。さらに、激励の手紙やファンレターまでも送られたというのだから、この会見は小保方氏にとって(非科学的な「イメージ回復」という意味では)「大成功」だったのだろう。

「女の涙は武器」というが、「若い女性が疑惑や批判の矢面に立ち、涙を浮かべながら約2時間半の『集中砲火』に耐えた」――。この一点だけで多くのお人好しな国民を感動させ、同時に怒りや追及の矛先を理研に向けさせたという意味で、彼女は相当したたかな「大女優」であった。

だが、もしこれが小保方氏ではなく、あの「iPS細胞騒動」の森口尚史氏が釈明会見をしたとしても、世間の反応は同様だっただろうか…。

140411-2.jpg

むしろ「袋叩き」がエスカレートしていたのではないだろうか…。小保方氏が持つ「容姿」「性別」「年齢」というバイアスがかかっていたからこその現象…と考えれば、それは論理ではなく感情に左右された「色眼鏡」ということになる。

いつもオリンピックなどスポーツの国際大会を観て思うのだが、日本人選手は勝っても負けてもよく泣く。また、(本音はともかく)「自分ではなく他人のために戦う」という競技姿勢も日本人ぐらいであろう。それもこれも「感動」を求める心理が根底にあり、考えようによってはそれが日本人の美徳でもある。

そして、それをよく分かっている日本のマスメディアは「涙を誘えばこっちのもの」とばかりに、とにかく「感動」を作りたがる。特に左巻きの反体制メディアは、3.11以降の関連報道の度に「可哀想な被災者」を前面に出して同情を買い、自社のイデオロギー寄りの世論を形成しようとしているのが常だ。

さらに、一切の感情論を排除して科学的理論の応酬をしなければならない会見の場で「今の心境は…」「割烹着は…」などとしか質問できない記者たちのレベルからして「ダメだこりゃ…」である。

基本的に、情緒や感傷というのは人間の心の美しい部分ではある。とはいえ、あくまでTPOという分別があってこそ。「ノーベル賞級の世界的発見」の論文に対する疑義や正当性という科学的問題に「心」を持ち込んで論点をぼかすのは卑怯としか言いようがない。

だが、話の展開によっては理研と繰り広げられるであろう法廷闘争でも、代理人は感情に訴え世論を味方につける戦術なんだろう。あほらし…。

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