和牛オーナーは「被害者」なのか

黒毛和牛オーナー商法で知られる安愚楽牧場(栃木県)が民事再生法適用を申請し、事実上倒産したことが波紋を広げている。債権者約7万5千人、負債総額約4,330億円という超大型倒産で、全国で被害対策弁護団も結成されたようだ。
宮崎県で起きた昨年の口蹄疫問題でオーナーが大量解約、次いで3月の福島第一原発事故によりさらに解約申し込みが殺到したことがトドメを刺したようだが、システム自体に和牛価格の下落に対するリスクヘッジが全く取られておらず、破綻必至のビジネスモデルだったようだ。
「低リスク・高リターン」を謳っていたとはいえ、堅調な頃は年3~4%の配当を遅配なく続け、バブル期も無理な利上げを行わなかったと言われる。だとすれば、少なくても確信犯的な詐欺商法ではなく、想定外の「オーナー引き揚げ」というリスクマネジメントの失敗に他ならない。
資産運用が「リスクあってのリターン」なのは常識以前の話。銀行が潰れるご時世に、まして経営情報を入手しづらい非上場会社に金を預けること自体が「最大のリスク」だったはずだ。
投機でも投資でも、「安全・確実・高配当」などあるわけがない。高利回りを謳う投資がいずれ破綻することは歴史が証明しているが、必ずあった「引き際」を見極められなかった結果が、今回の「高リスク・無リターン」だったのだ。
それを省みることなく、預けるだけで金を増やす、つまり不労所得が欲しいという欲望のツケを「被害者」という言葉に置き換える「債権者」の感覚には、少なからず違和感を覚える。
財テクには株・先物・土地・為替など様々な手段があるが、パチンコすらやらない「博打嫌い」の私にとっては単なる知識でしかない、どうでもよい存在だ。(そもそも原資もないが…)
ただ、表沙汰になった投資詐欺事件については、その都度関心を持っていた。古くは地金の現物まがい(ペーパー)商法で有名な「豊田商事」から、円天という擬似通貨で年100%配当する「L&G」、エビ養殖事業で年50%の配当を謳った「ワールドオーシャンファーム」、そして元本保証で預託金を集め、配当として各種施設の優待利用権を与える「岡本倶楽部」など、枚挙に暇がない。
これらは完全な詐欺事件として糾弾されるべき会社だったが、一方で被害者がこれらに手を出した理由が揃って「金儲け」という点であることを鑑みると、「何度、同じことを繰り返すのか」と人間の果てしない欲深さにはいつも閉口してしまう。
「うまい話にゃウラがある」という言い尽くされた言葉も、投資会社のセールストークの前では簡単に打ち消されるようで、日本人特有の「お人好し」という美徳が逆効果に働く典型例だ。
少なくても儲け話には「人を見たら泥棒と思え」くらいでいいと思うのだが…。
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カテゴリ : 時事社会