交通取り締まりの現状

警察庁は今日、交通違反の取り締まりについての在り方を議論する有識者懇談会の設置を発表した。(最下部に報道記事)
これは、古屋圭司国家公安委員長が6月4日の定例記者会見で「取り締まりのための取り締まりになっている傾向があり、警察の信頼という視点からも疑問符がつく」と指摘したことに伴うものだ。
現代警察による交通取り締まりは事故の未然防止というより「検挙点数至上主義」に走っているのは歴然で、問題提起としては遅すぎるくらいではあるが、公安委員長による発言ということで警察庁も動かざるを得なかった…というところだろう。
交通取り締まりによって納付される反則金は巨額な「利権」と化しているため、警察にとって交通違反は「無くなると困る」貴重な財源である。そのため「努力目標」という名のノルマを課せられているのも公然の秘密である。
スピード違反にしてもシートベルト着用義務違反にしても、警察官が身を隠せる場所の確保が何より重要であり、「カモねぎ」のごとく違反を待ち構えているのが現実だ。また、危険度が数倍にもなる「雨天時」の取り締まりは極端に少なく、交通量が減ってスピードを出しやすくなる「夜間」の取り締まりも見かけることはほとんどない。つまり、楽な環境で成果を挙げたいのだ。
ある東京キー局に勤める友人から聞いた話だが、テレビ各局が定期的に制作している「警察24時」の類の“バラエティ番組”は典型的な警察プロパガンダで、「いかに日本の警察が優秀か」という印象操作にかけては卓越した編集になっている。
例えば、この手の番組には必ず「職質(職務質問)のエキスパート」なる警察官が登場するが、「数打ちゃ当たる」式に撮りまくり、ほんのわずかな成功例だけを取り上げ、いかにも百発百中で犯罪を見抜いたように仕上げている。そもそも、職質のほとんどのケースが「警察官職務執行法」第2条違反なのはあまり知られていない。
※警察官職務執行法
第2条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。
話は少し逸れたが、今回の有識者懇談会が今後、取り締まり方法にどのような影響を与えるのか未知数だが、関連法規そのものを変えない限り、効果は一時的なものだろう。というのも、過去にも警察庁は全国の地方警察に以下のような通達を発付しているのだ。
・警察庁依命通達(昭42・8・1 警察庁乙交 警察庁次長)
「いわゆる点数主義に堕した検挙のための検挙あるいは 取り締まりやすいものだけを取り締まる安易な取り締まりに陥ることを 避けるとともに、危険性の少ない軽微な違反に対しては、警告による指導を積極的に行うこととし、ことさら身を隠して取締りを行ったり 予防または制止すべきにもかかわらず、これを黙認してのち検挙したり することの無いよう留意すること」(一部抜粋)
・昭和61年10月21日警察庁乙交発第9号
5-(2)取締りの適正な実施
取締りに当たっては、取締りのための取締りとなることのないよう特に配慮するとともに、交通の実態、交通事故の発生状況、国民のニーズ等を的確に分析し、交通事故に直結する危険性の高い違反、繰り返し違反を犯す悪質な運転者の違反、交通の円滑な流れを阻害し、他の運転者に著しい迷惑を及ぼし、ひいては善良な運転者の遵法意識をも低下させることとなるような違反等を重点とした取締りを実施すること。(一部抜粋)
だが、取り締まり現場が多少おとなしくなったのは一時的なもので、時間が経過すれば元の木阿弥である。国民に知られることのない「通達」程度ではこの程度なのだろう。
かくいう私もその昔、砂川市の交通機動隊(以下、交機)にスピード違反(16㎞オーバー)を検挙され、大モメしたことがある。青キップにサインをさせて「一丁上がり」としたかった交機の取り締まりに異議を唱え、サインを拒否。あえて現場検証のうえ、供述調書などを書類送検させた。さらに私は裁判で取り締まりの現状を訴えるため、札幌地検に対して「必ず起訴して下さい」旨の上申書まで送付したのだが、結果は不起訴となってしまった。
若気の至りだったとは思うが、そうした過去もあり、基本的に私は交通警察を信用していない。取り締まりを本当に事故防止を願っての抑止力とするのであれば、カネではなく違ったペナルティを考えるべきではないのか。
交通違反、摘発の在り方議論=有識者懇を設置―警察庁
「いつも同じ場所」「摘発が目的化していないか」。交通違反の取り締まりについて国家公安委員会が問題提起したことを受け、警察庁は18日、有識者の懇談会を設けると発表した。速度違反を中心に摘発の在り方を議論してもらう。
取り締まりに対する問題提起は、2月と3月の国家公安委で複数の委員からあった。「地元の人は取り締まり場所を知っており、摘発されるのは県外のドライバーがほとんど」「重大事故に直結する場所で見かけない」などと場所が固定化しているとの指摘や、「前方不注意などが原因の事故が多くなっているのに、速度違反に重点を置くのはいかがか」など重点の見直しを促す内容だった。
警察庁によると、摘発する際は違反車を止める安全な場所を確保する必要があり、必ずしも事故が多い場所を選べない。場所に限りがあるため、順番に使っても事実上固定化している可能性があるという。
(時事通信 2013.07.18)
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カテゴリ : 時事社会