一字違いが大違い

印刷物のデザイン・制作に携わっていると、誰しもが経験しているのが、「誤植」(ごしょく)である。誤植とは、活版印刷全盛の時代に活字を版を物理的に組む作業を「植字」(しょくじ)と呼んでいたが、これをミスする、つまり「誤った植字」というのが語源だ。今でいえば「タイプミス」ということになるだろうか。
デザイナーなど制作者は入力した文章の内容を二度三度とチェックしているはずなのだが、誤植を見落とし、印刷が完了してしまってから気付くケースが多々ある。時間の余裕があれば「刷り直し」ということもあるが、場合によっては「訂正シール」を貼る、あるいは「正誤表」の添付によってしのぐ場合もある。
いずれにせよ、事前に対処ができればまだ救いようがあるのだが、問題なのは世に出てしまった場合である。上の写真は、ある居酒屋の飲み放題料金の案内だが、そもそも制作者も居酒屋側も気付いていない(気にしていない)致命的なミスがある。カンマ「 , 」をドット「 . 」にしてしまっているのだ。
日本や英語圏の国では、カンマは「1,000,000円」のように3桁ごとの区切りとして用いられ、対してドットは「25.5%」のように、整数以下の小数が用いられる場合にのみ使用される。
つまり、写真の表記を厳密に解釈すると「1円500銭」になってしまう。常識的に考えれば分かることとはいえ、中には「2円出すから釣りをくれ」という意地悪な輩もいることだろう。そもそも、「銭」が3桁になること自体があり得ないのだが、何にせよ正しくは「¥1,500」と表記すべきであろう。
さて、印刷物が世に出回った後に誤植が発見された場合、責任の所在でモメるケースがある。もちろんタイプミスした人間が悪いのだが、クライアントの原稿が間違っていたというケースも決して少なくない。その可能性が十分にあるために「先方(クライアント)校正」というプロセスがある。ゲラの状態で一字一句を確認してもらい、「これでOK」というゴーサインを経て印刷作業に取りかかるのだ。
つまり、「こちら側の義務は果たした」という主張もできるのだが、なかなか納得してもらえないケースも多い。対処はケースバイケースではあるが、自身もその例外ではないので、価格が満載されるようなチラシは常にヒヤヒヤものである。
ちなみに、以前に賃貸不動産のチラシを制作した際、「築5分・駅から徒歩3年」と誤植してしまった過去はもう忘れた。
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