永遠も半ばを過ぎた

フリーデザイナー兼カメラマンの苦言・放言・一家言

任侠・ヤクザ・暴力団

2014/09/14(日)
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福岡県警は13日、北九州市の指定暴力団「工藤會」ナンバー2の田上不美夫会長(58)を殺人容疑で逮捕した。これに先立つ11日には、トップである野村悟総裁(67)が同容疑で逮捕されたばかりで、いずれの件も組幹部らと共謀して北九州市の漁協組合長を射殺したというもの。

2000~09年、一般人を対象にした報復目的の殺人未遂や放火事件を5件起こしたとして、工藤會は2012年に全国で唯一の「特定危険指定暴力団」に指定された。そのツートップの逮捕劇ということで、全国ニュースとして報じられた。

Wikipediaの「工藤會」では、組織の傾向として「極めて好戦的」「強烈な反警察志向」「容易に激昂する」「闘争行動それ自体に価値を見出す」「最も先鋭的な武闘派組織」などと表現されているが、一方では木村博幹事長が前面に立ってメディアのインタビュー取材などを積極的に受ける団体としても知られる。

あるインタビューによると、木村氏は「我々は60年以上も北九州市を独占的に押さえ、他の暴力団や半グレ、不良外国人なども我々が駆逐してきた。いかに地域に密着してきたかという証左であり、カタギの市民を殺害するなどあり得ない」という主旨の発言をしている。

市内で頻発していた発砲や放火事件も、県警やメディアは「工藤會による犯行」と確信しているが、ほとんどの事件で工藤會と結びつける証拠が一切出ず、未解決のままとなっている。漁協組合長殺人事件も含め、同会は「全て工藤會の仕業にさせようとしている冤罪」と主張しているわけだ。

それが事実かどうかは知る由もないが、福岡県公安委員会が同会を「特定危険指定暴力団」と定めた理由として「暴力的要求行為等が多数敢行されていることなどから、工藤會の構成員等が更に反復して暴力行為を行う恐れがある」と主張しているが、これには疑問が残る。

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指定するにはそれに見合う客観的な裏付けデータが必要になるが、工藤會組員を逮捕し取り調べた実績しか基礎データになり得ない中、全国的にも検挙率が低い福岡県警にそれだけの蓄積があったのかどうかは疑わしい。

少なくても、警察庁が発表している「暴力団情勢」では工藤會の暴力的要求行為等の発生率は全国平均値を下回っており、証拠を掴めず逮捕に踏み切れない当局の焦燥感が強行的に指定した「勇み足」だとする見方は少なくない。

何にせよ、今回の逮捕劇によって他の一連の事件も全容を解明できるのであれば、市民も安心して暮らせるようになるだろう。

  ◇

さて、近年の暴力団だが、暴力団対策法の改正や都道府県の暴力団排除条例などにより、暴力団と商取引したというだけで一般市民すら検挙される時代になった。しかし、法律も条例も暴力団の「存在自体を違法」とはしていない以上、彼らも日常生活というものがあり、いわば「暴力団に缶コーヒーを売った自動販売機が逮捕される」時代になっている。

戦後の正統派(?)ヤクザは、「任侠」という言葉もあるように地域に溶け込み、いわゆる「岡っ引き」として無法者を駆除するなど「警察の別働隊」という側面を持っていた。だが、時代とともに博徒やテキ屋は淘汰され、ヤクザは「暴力団」という名称に変わり、バブルを経てその体質も様変わりしていったという。

組織売春・覚醒剤・ヤミ金融など反社会的な「シノギ」を資金源とし、一般市民に対する暴力行為も見られるようになった。こうした変質が自らの存在意義を貶めるようになり、芸能や政治など多くの業界と築いた「持ちつ持たれつ」の関係を精算することになり、すっかり「社会の害悪」として認知されることになった。

とはいえ、例えば1995年の阪神・淡路大震災発生時には真っ先に被災地に駆けつけ、救援物資の調達や炊き出しなどを行ったのが「五代目山口組」だったのは知られた話。それが「偽善」と言われようと、多くの被災者の力になったのも事実であり、彼らにも任侠道の片鱗は残っていたという印象は与えた。

現在でも、法律によって警察が手を出せない領域で「縄張りの治安」を守ってきたのは暴力団なのだが、彼ら自身が法律によって衰弱させられた今、台頭してきたのが傍若無人な不良外国人で、裏社会では最も力を持つことになる。

だが、不良外国人を取り締まる法律を制定しようにも、いつもの人権団体から「人種差別」との批判が噴出するのは必至で、法案が準備されることすらないだろう。カタギに対する最低限の節度は持っていた暴力団とは違い、不良外国人には「地域」「地元」などという概念がないだけに、日本の治安は悪化の一途を辿ることになるだろう。

法令の強化によって市民はおろか警察官に対しても暴力団員への接触を制限した結果、マル暴の刑事でさえ情報を取ることが難しくなっているという。結果として暴力犯罪の取り締まりを逆に難しくしており、警察庁はいわば「自分で自分の首を絞めている」ことになる。

暴力団を擁護する気はさらさらないが、「社会悪」である彼らも場合によっては「必要悪」であった。しかし、「何が何でも暴力団を壊滅させる」という感情的な理想論は「別の悪」を生み出すことになり、結果的に「治安がいい平和な国」という国際的な評価を打ち砕く結果になるような気がするのだが、どうなることやら…。

カテゴリ : 時事社会
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