「放射“脳”」の思考回路

スポーツニッポン(7月10日付)
音楽家の坂本龍一氏が中咽頭がんであることが分かり、治療に専念するため音楽活動を休止するのだという。(最後部に報道記事)
ここで終われば「お大事に」という話なのだが、「反原発活動の先頭に立ってきた立場なので放射線治療は拒否する」という意向が本当なのであれば、病人に対しての無礼を承知で「バカですか?」と言うしかない。
原子力発電と放射線治療を同一視するとは、まさに「ミソもクソも一緒」な極論思考で、本質を何も理解していなかったことを図らずも露呈してしまったようだ。反戦や反原発の活動家に顕著な「非論理的感情論」の極みである。
地球上には自然放射線というものがあり、生きている限りあらゆる放射線から逃れることはできない。例えば「世界的な音楽家」である彼は数え切れないほど「飛行機で」世界を回ってきたはずだが、国際線ジェット機の機内では地上の100倍もの放射線被曝をしていることは当然ご存知だったはず。
病気の治療に関しても、同じ理由でレントゲンやCTも拒否しているはずなのだが、本当に病気を治すつもりがあるのだろうか。最も効果的と言われている治療法をこのような稚拙な屁理屈で拒否することで、様々な事情により治療したくてもできない同じ病気の患者はどう思うだろうか。
本人はヒーロー気分なのかも知れないが、「命を守る」と謳ってきた活動家の、逆に死期を早めるこのような言動は自己矛盾そのものである。また、過去には「たかが電気」発言でも物議を醸したが、これまで電気による恩恵を受け、YMO時代から電気楽器を駆使してきたアーティストの台詞とは思えず、「反原発」を「反電気」に飛躍させる思考回路にはドン引きしたものだ。
「坊主(原発)憎けりゃ袈裟(がん治療)まで憎い」のだろうが、理論や知識ではなく感性だけで生きてきたことの証明で、「放射能」ならぬ「放射脳」と揶揄される所以である。
とはいえ、どこまで本気で言っているものやら…。勇ましいことを言う人間に限って臆病なもので、本当に命の危険が迫れば安っぽいポリシーなどすぐに捨ててしまうことだろう。アメリカの病院で治療をするというのも、余計な勘ぐり(こっそり放射線治療?)を招いているようだが…。
ともあれ、駄々っ子みたいなプライドで命を粗末にしないよう願うばかりだ。
カテゴリ : 時事社会