
…と言っても、生活に窮してバイトを始めたわけではない。
開業した12年前には予想もしなかったほど安価なデザイン系ソフトやデジカメが普及してしまった昨今。企業や個人を問わず、金をかけずに自分で印刷物を作ったり写真を撮ったりする時代になった。とはいえ…
「これじゃ商売あがったりでんがな~
」…とグチを言っても始まらない。下降線をたどるばかりの売上を取り戻すため、久しぶりに営業活動に本腰を入れることにした。
現存の企業クライアントは逃げられないように引き締め(?)を強化するとして、課題は個人客の開拓である。定期的な仕事はほとんどないのだが、私のようなフリーランスには個人客からの依頼が少なくない。
ならばということで、対象を“写真撮影”に特化し、「舞台(ステージ)やスポーツ、イベントなどの撮影を通常料金の4割引という大出血サービスで引き受けます」旨のチラシを作成し、個人住宅へ投げ込むという「ダメ元作戦」に出た次第。
だが、このポスティングという行為、予想していた以上にキツ~い作業である。肉体的にも、そして精神的にも…
6月1日からのキャンペーンに合わせて今日から始めた(遅い?)のだが、いきなり初日から外気温は28℃。週末の野球審判とは身体の動きが違い、いわば炎天下での有酸素運動である。上半身の着替えを1着分だけは持参したが、とても足りるものではなかった。
これで少しダイエットできると考えれば苦にはならないが、問題はポスティングに対する「世間の目」である。作業効率を考えると必然的に「マンション」へ足が向くのだが、入口で「チラシお断り」の張り紙は当たり前。管理人がいる所ではお伺いを立ててみるものの、ほとんどが「ノー」。すれ違う住人からの冷ややかな視線、そして罵声…。
自身もマンション暮らしで、集合ポストには毎日多くのチラシが入る。一枚ずつ読んでいるのかと問われると「読んでません」が答えだが(笑)、マンションではそれが当たり前だと思ってきた。捨てる手間など知れているわけだし…。だが、投げ込みチラシが迷惑だと思っている人は思った以上に多いと実感できた。
そして、ポスティングのバイトと私が決定的に違うのは、チラシに自宅(仕事場)の住所と電話番号が印刷されていることだ。投げ込みさえ終えてしまえば責任を果たしたことになるバイトと違い、クレームの電話は自宅にかかってくるのである。先刻、初日にして「今から引き取りに来い!」という電話がかかってきた。(本気ではなかったようだが…)
場合によっては刑法(住居侵入罪)という「逮捕リスク」を負っていることもあり、印刷したチラシ(枚数はヒミツ)を全て撒き終わるまでは夜もゆっくり眠れない。だが、これで多少でも仕事が来れば儲けものである(来るのか?)。
自らの企画とはいえ、ずいぶん泥くさい営業を始めたものだが、自営業やフリーランスの現実はこんなものだ。とはいえ、「経験に勝る知識なし」が信条なので、このような経験も後の人生に必ず役立つ…と自分に言い聞かせ、明日も「汗」と「冷や汗」をかきながら住宅街に出没するのである。