鈴木宗男代表(左)と鈴木宗男候補 (写真:共同通信)第23回参院選が公示されたが、新党大地は比例代表の目玉候補として、公民権停止中のため出馬できない鈴木宗男代表と同姓同名の「鈴木宗男」氏を擁立した。(最下部に報道記事)
鈴木代表は記者会見で「有権者に鈴木代表が出馬していると誤解させて得票する狙いはない」と弁明したそうだが、一方で仮に自らが出馬できたとしたら鈴木候補を出馬させることは「100%ない」とも言い放ってしまった。これは、候補の政策能力や人格などではなく、氏名が「鈴木宗男であること」に重きを置いている何よりの証左であり、どう言い訳しても「誤解票」を当て込んでいるのが見え見えである。
日頃から新聞を読んだり報道番組を観ていれば、鈴木代表がまだ出馬できないという事実は明々白々なのだが、残念ながら日本の有権者は衆参問わず、政策は何ひとつ語れずとも知名度だけで比例区に擁立されたタレント(スポーツ含む)候補を易々と当選させてきた実績(?)がある。大地側が「バカな世間知らずが相当数『鈴木宗男』と書くだろう」と考えても不思議はない。
私は個人的に、鈴木宗男という個性的な政治家は決して嫌いではない。氏の演説を聴いてファンになったという有権者は数多く、自身も演説で心が動かされそうになった経験がある。だが、自民党議員だった頃から「政策」ではなく「政治力」で力をつけてきただけに、選挙運動時の土下座は得意でも、心から「国民の僕(しもべ)」だと自覚していたとは思えない。だからこそ、今回のように国民をバカにしているとも受け取れる擁立劇を演じられるのだ。
鈴木代表は昨年の衆院選で、党代表者による公開討論会の場で掟破りの「全立候補者名の羅列」をして顰蹙を買った。また、鈴木代表の盟友である松山千春が大地候補の応援演説で自曲を披露するのも札幌では選挙名物となっているが、プロの歌唱を無償で有権者に与える行為は利益供与であり、本来ならば公選法違反である。
他にも枚挙にいとまがないが、「鈴木宗男」「新党大地」という言葉には、暗黙を含めた各種ルールを平気で破るアウトロー集団という印象が拭えない。言うまでもなく、国会はルール(法律)を作るところ…と考えると、言わずもがなだろう。
ただ、先述した「国民をバカにしている」のではなく、国民を「バカだと思っている」政治家はゴマンといる。選挙前には頭を前に下げるが、当選した次の日からは後ろに反り返る「センセイ様」のなんと多いことか…。そう、彼らにとって有権者は「主権者」ではなく「下々」なのだ。
だが、大多数の有権者にとって国政選挙の候補者など「話したこともない」相手であり、本当の人格や能力など分かるはずもない。報道などによる「イメージ」だけで投票しなければならない現状では、もとより政治家に多くを求める方が間違っているのかも知れない。
嗚呼、そしてまた「バカな国民」が「アホな議員」を選ぶ空虚な祭りが始まった。
同姓同名「奇策ではない」 2人の鈴木宗男氏が並んで会見
政治団体新党大地の鈴木宗男代表(65)は4日午後、東京都内で記者会見し、参院選比例代表に自身と同姓同名の候補者を擁立したことについて「主義主張が一致したからで、奇策ではない」と述べ、有権者に鈴木代表が出馬していると誤解させて得票する狙いはないと強調した。
鈴木代表は、候補者の鈴木宗男氏(73)と並んで会見に出席し「私が本物の鈴木宗男。こちらも本物の鈴木宗男さんです」と紹介した。
会見では同姓同名候補の是非に質問が集中。鈴木代表は「政策の共有が一番の理由」と繰り返す一方で、仮に鈴木代表が出馬できたなら「(候補の)鈴木さんが出ることは百パーセントない」とも述べた。
鈴木代表は受託収賄罪などで服役し、公民権停止中のため出馬できない。
(スポニチアネックス 2013.07.04)