
「全国いか釣漁業協議会」(以下、漁協)が、最近の急激な円安による燃料価格の高騰で経営難に陥っている小型イカ釣り漁業者が26~27日の2日間、一斉休業すると発表したそうな。(最下部に報道記事)
しかも、漁業者と国が折半で基金を積み立て、原油価格が高騰した時に穴埋めする「漁業経営セーフティネット制度」は活用せず、「今回の高騰は政府の円安政策によるもの」として国に穴埋め分を全額要求するのだという。
いったい何を考えているのやら…GWを目前に控えた飲食業界にイカを卸せなくなるのを承知の上で、まるで自分たちだけが被害者と言わんばかりの身勝手なストライキで、呆れるほかない。燃料の高騰によるコスト増で経営が苦しいのは運輸業や製造業などでも同様だが、その多くが「為替変動は想定リスク」として対処しているのだ。
同漁協は「国の政策による円安」を主張しているが、国家的命題である「デフレ脱却政策」による「結果論」でしかなく、恣意的に国が為替相場を操作したわけではない。しかも、急激な円安とはいえ、まだ90円台(米ドル)に留まっている。では120円台を記録した07年7月頃、漁業者の経営はどうなっていたのか。
そもそも「燃料高騰分が補填されても赤字になる」(漁協)のなら、そんな商売は辞めた方がいい。国民の血税でイカ漁の赤字補填をするくらいなら、イカという食べ物がなくなっても99.99%の国民は困らないだろう。
2011年10月末には75円台という戦後最高値を更新したが、この頃には相当な利益が出たに違いない。同じ理屈で、この時に漁協は利益還元として政府に寄付でもしたのだろうか。「儲けが出たらオレのもの。損が出たら国が補償しろ」という稚拙な主張は、際限なき戦後補償を求め続けるどこかの隣国と一緒で、同じ民間商売人として軽蔑しかできない。
TPP問題も同様なのだが、ゴネれば補助金や補償金が出る第一次産業には、創意工夫という言葉を知らない甘ったれた経営者が少なくないようだ。
イカ釣り:2日間の一斉休業入り…燃料価格高騰の支援訴え
円安に伴う燃料価格高騰への政府支援を訴えている小型イカ釣り漁業者でつくる「全国いか釣漁業協議会」は26日から、2日間の一斉休業に入り、能登博之会長がこの日、水産庁の本川一善長官に燃料価格高騰分への対策を要請した。また、林芳正農相は同日の記者会見で「予期し得ない異常高騰についての対応を検討する」と述べ、6月をめどに漁業者への支援策をまとめる方針を明らかにした。
協議会加盟の4,000隻が一斉休業件するのは、世界的に資源価格が高騰した08年以来。政府は10年度から、漁船の燃料価格が一定期間の平均を超えた場合、国と漁業者が折半で積み立てた基金から補填(ほてん)する制度を導入している。しかし、イカ価格の低迷や漁獲高の減少に苦しむ中、円安による燃料高が追い打ちとなり、「燃料高騰分が補填されても赤字になる」(同協議会)という。
(毎日新聞 2013.04.26)