
毎年、この時期は憂鬱だ。
…と言っても、義理チョコのお返し配布日が迫っているのに、何も買っていないという話ではない。個人事業者が避けて通れない「確定申告」の話である。
税理士を雇うほど儲かっているわけでもないので、申告書類は自身で作成している。青色申告も10回目ともなるとすっかり慣れたものだが、それでも経理の専門家ではない。
領収証の整理から始まり、源泉所得税・経費の按分計算・原価償却・科目分けなど頭の痛い作業を経ての決算書と申告書の作成は、本来の業務の1ヶ月分ほどの精神的・肉体的消耗でもある。
そして本日、無事に提出した後の感想が「
確定(した税額は)
深刻」だったり…。
さて、給与所得者が経営者から所得税を先取りされ、年末調整にて還付される「源泉徴収」は知られた言葉だが、私のような立場でもこれとは無縁ではない。
法人が個人に対して支払う原稿料・講演料・デザイン料または弁護士や税理士などに対する報酬は、その支払者が源泉徴収することになっている。すなわち、クライアントから私に支払われる報酬は最初から10%を天引きされ、その分をクライアントが私の代わりに所得税として納めるのだが…。
私の場合、源泉徴収対象のメインは「グラフィックデザイン料」ということになるが、これらの名目だけで請求書を切ることはあまりない。つまり、デザインのみで完結するのではなく、最終形の「印刷物」として納品する場合が多く、デザインはそれまでの過程にすぎないのだ。
請求細目の例として【デザイン+撮影+制作+印刷(+製本)】という形になるのだが、【デザイン】と【制作】はなかなか境界線が引きにくく、その違いの解釈も難しい一方で【制作】の方は源泉徴収対象にはならない。そして【印刷・製本】に至っては外注費であり、報酬にはなりえない。
このような場合、厳密に言えば源泉徴収義務者(クライアント)は総請求額からデザインおよび撮影にあたる数字に対してのみ源泉しなければならない。だが、これでは請求する方も、される方も事務的な手間がかかり、効率は良くない。
確定申告で最終的に納税することに変わりはないため、このようなケースでは過程の業務を全部ひっくるめて「制作料一式」として請求し、私が税務申告している。こうすればお互いにスッキリするうえ、クライアント側の「徴収漏れ」という事態も防ぐことができる。
とはいえ、まったく面倒な税制だとグチのひとつも言いたくなる。そもそも、なぜこのようなシステムになっているのだろうか…。「定価や相場が曖昧な業務分野で、しかも個人の申告では信用できないから、取りっぱぐれがないよう法人側に代理で支払わせろ」ということなのだろうか…。
個人事業主の、納税者としての社会的信用を改めて考えさせられる時期だ。