自治体が「タダ働きデザイナー」募集

まったく、何を考えてるものやら…。大阪市天王寺区が、区の印刷物デザインを民間委託するにあたり、「任期1年、無報酬」という条件を提示したのだという。(最下部に引用記事)
さすがにデザイン業界が猛反発したため計画は中止されたようだが、どうしたら「よりよいものを」作るのに「タダで」という発想になったのか理解に苦しむ。
特にグラフィックデザインという世界は「仕入れ」や「原材料」という概念がなく、その対価はほとんどが「技術料」である。そのため、デザイン料の見積もり基準も様々で、デザイナーの力量とは関係なくA社とB社で2倍も開きがあることさえ珍しくない。ただし、当該広告物による予想宣伝効果は組み込まれるが…。
近年、印刷・デザイン業界が斜陽産業になってしまったのは、デザイン用ソフト・パソコン・フォント・プリンタなどが続々と廉価販売されるようになったのが一番の要因だ。素人が手軽にデザイン(のようなもの)や出力(印刷)ができるようになったため、クオリティさえ妥協すれば印刷物の制作は自分でできてしまう。
そのような背景から、業界へのクライアントの意識も低下し、デザイン料などは「手間賃」程度にしか考えなくなってしまった。今回の件も、「タダでも自治体の仕事をしたいデザイナーは多いはず」というトンデモ思想を生み出してしまったのだろう。自治体の仕事は一案件で数十万から数百万は請求できるものだ。
特に、私などの「フリーデザイナー」たちは、「フリー(ランス)」と「フリー(無料)」を履き違えられるという笑えない逸話もあるほどで、今後も生き残っていくのは至難の業なのかも知れない。
まったく、改めて業界のトホホな現実を思い知らされたニュースだったわい…。
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