写真(C)産経新聞 この5日間はいったい何だったの?…という空騒ぎだった札幌保健医療大など新設予定3大学の不認可問題。結局は元の鞘に収まったのだが、田中真紀子文科相の「思いつきパフォーマンス」に非難の声は尽きないようだ。
しかし、これは「大臣職権を発動した」のではなく、そもそも制度自体を理解していなかっただけだったことは、大臣のこの発言から汲み取れる。
「認可の段階で建物が出来ているのはおかしい。誰かが情報を流してる」どうやら、この人は
【許可】 と
【認可】 を履き違えているようだ。
「許可」とは、原則として禁止されていることを特定の場合や人物に対して解除することで、主管官庁の自由裁量で行える。一方の「認可」は、当該申請が一定要件(今回は大学設置基準)を満たしてさえいれば、認容しなければならない。大学側はその原則に従っていただけの話である。
文科省の大学設置・学校法人審議会が前日に「新設を認める」と答申していた以上、それを覆す権限は本来なかったはずだ。「現行の基準が甘い」というのであれば、次回の申請分から適用できるよう新基準を策定すれば良かったのだ。
ただ、「少子化の日本にまだ大学が必要なのか?」という疑義には共感するし、補助金や天下りなど利権の巣窟でもある大学が簡単にポンポンとできてしまう現状の制度にも問題があるのは確かだろう。
とはいえ、今回の騒ぎが「次の当選はない」と囁かれている田中氏の選挙対策だったとすれば、振り回された大学関係者や受験を控えた生徒たちにとっては迷惑千万な話である。
田中氏は新党結成を理由に東京都知事を任期途中で辞職した石原慎太郎氏を「暴走老人」と酷評していたが、ブーメランとなって戻ってきてしまったようだ。
野田改造内閣の「目玉」として起用されるも世論には「時限爆弾」扱いされていた田中氏だったが、早くも「期待通り」の騒ぎを起こしてくれた…というところか。
【田中文科相不認可問題】 3大学新設、一転認可 田中文科相表明
田中真紀子文部科学相が秋田公立美術大(秋田市)など3大学の新設を不認可と判断した問題で、田中文科相は7日、衆院文部科学委員会で「現行制度にのっとり適切に対応する」と述べ、一転して新設を認可する考えを表明した。3校側の強い反発のほか、身内の民主党内からも反対論が強まったことから判断を覆した。文科省は近く正式に通知する。これにより3大学の来春開学が決まった。
不認可判断は3校側や受験生に加え、文科行政にも大きな混乱を招いており、野党側は田中文科相の罷免を含めた政治責任を厳しく追及していくとみられる。
ほかの2校は、札幌保健医療大(札幌市)と岡崎女子大(愛知県岡崎市)。
委員会後、田中文科相は記者団に「3校を認可する。大学設置のあり方の見直しはかなりの方が賛成していると分かった。これが私が知りたかったことだ」と翻意の理由を語った。
田中文科相は委員会で、3大学について「不認可処分は行っておらず新基準をつくり判断する」と強調。しかし野党側が「法治国家ではない手法」などと即時撤回を求め、民主党内でも「基準を満たしている」「一刻も早く認可すべきだ」と反対論が強まった。
3校の理事長らは同日、与野党に陳情した後、文科省を訪問。対応した笠浩史文科副大臣に「1日でも1時間でも早く結論を得たい」などと訴え、今週内の正式認可を求めた。
田中文科相は2日、大学の設置認可手続きを厳格化する考えを表明。「見直しを先送りにしたままの新設は認められない」として3大学を不認可とした。
しかし公私立大の設置を審査する大学設置・学校法人審議会は認可答申したため、既に校舎の整備や学生募集の準備を進めていた大学側は法的措置の検討を表明するなど反発していた。
(産経新聞社 2012.11.7)