エンジンオイル考察
2012/11/02(金)

先日、久々に車のオイル交換をした。前回の交換から約2万kmぶりだ。
バイクのオイル交換はいつも自身でやっているのだが、車の場合はオイル抜きのためにリフトする必要があるので、カー用品店に頼んでいる。
交換を終えた店員から「2万kmは長すぎです。もっとコマメに交換しましょうね」と言われてしまい、苦笑しながら思わずこう思ってしまった。
「やっぱりオイルはドル箱か…」
もう8年ほど前になるが、あるネット掲示板で自動車関係のエンジニア(匿名)の書き込みを読んだ。これを読めば、いかに一般に「オイル都市伝説」が浸透していたかが分かるだろう。保存してあったので以下に転載する。
※原文には文脈が変わらない程度に、読点の増減や段落位置の変更など多少の手直しを加えた。
◇ ◇ ◇
カー用品店やガソリンスタンドでは、「オイル交換は3千km毎、走行距離が短くてもオイルの酸化劣化があるので、半年に一度は交換、オイルエレメントはオイル交換2回に1回交換(6千km毎)」を推奨しているようですが、現在のほとんどの日本製乗用車(オイルが高温となるターボ車は除く)のメンテナンスノートには1万5千km毎または1年毎にオイルとエレメント(フィルター)を交換することが記載されており、これが技術的に充分保証できる交換時期です。
町の整備業者にとってオイルはドル箱であり、毎月の売上目標を達成するためにカーメーカーが責任を持って記載している交換時期と違って、極端に短い交換時期を勧めているのです。ちなみに、ヨーロッパ製の乗用車のオイル交換時期は2~3万km毎であり、日本からの輸出車は1万5千km毎であることが、ヨーロッパのユーザーには地球環境とユーザー維持費の観点で、不評であると言われています。
自動車のエンジニア(私達)は、地球環境の悪化や化石燃料の枯渇を防止するため、燃費の低減とオイル交換時期の延長に、血の滲むような努力をしているのです。オイル交換時期の延長には、オイル自体の長寿命化やエンジン冷却システムの強化などをオイルメーカーと共同で開発してきています。
しかし、一般の整備業者などが商業主義によってオイルの交換時期をやたらに短く設定すると共に、モリブデン(摩擦係数低減剤)などの特殊な添加剤を入れて高価なオイルを販売していることに対して、私はいつも苦々しく思っていました。
しかも、オイルが一般の人にとっては得体が知れず、特に寿命に関する知識が全くないことにつけ込み、劣化オイルによるエンジン本体のダメージをことさらに強調し、何の根拠も無しに、まことしやかに短距離・短期間でのオイル交換を推奨する雑誌類が後を絶たない日本の現状は嘆かわしい限りです。また、オイルを開発しているエンジニア自身も、オイルが金のなる木である現実の前には、真実を語ろうとしない面もあります。
オイルの劣化は、高温時の酸化によるベースオイルや添加剤の劣化、軸受けや歯車噛み合い部での機械的剪断によるオイルの鎖状分子の破壊(剪断劣化)、ガソリンの混入などによる希釈(粘度低下)、水分の混入(エンジンが加熱・冷却を繰り返し外気が導入・排出することによって、水分が混入)による変質などが挙げられます。
上記のうち酸化と剪断による劣化が主体で、その中でも高温による酸化劣化が支配的です。ただ、オイルの酸化は100℃以上の高温では問題になりますが、温度に対して指数関数的な劣化特性(10℃上昇毎に寿命が1/2と言われている)を示すことから、常温でしかも太陽光に完全に遮断されたエンジンのクランクケース内で、オイルが実用上問題となる程に酸化劣化するとは到底考えられません。(100℃で600hの寿命とすれば、130℃では75h、40℃では1,600日の寿命)
従って、半年に一回または3千km走行でオイルを交換せねばならない理由はありません。メーカー指定の1年毎交換もどちらかと言えば、オイルによる利益確保が主目的ではないかと思っています。(日本では、今まで誰も突っ込んで問題にしたことがなかった)
以上のように、オイル劣化の進み具合は、オイル温度とエンジン負荷とに左右されるので、ベンツやBMWなどドイツ車の一部では、車載コンピュータでそれらを常時監視し、オイルの劣化度合いを演算して、寿命が来たと判断されるときには警告灯によってユーザーに知らせるなど、非常に合理的にオイル交換を指示するものもあります。
日本車は全て走行距離と年月で単純に交換時期を表示していることから、真夏の高温時に山岳路を走行するなどの厳しい条件もある程度想定して1万5千km(平均時速25km/h×600h、100℃程度)が設定されているのです。従って、実際の一般走行ではオイル温度はさらに低く、劣化も少ないので、推奨値以上の走行距離でもオイルは充分に使用可能なのです。
三菱石油の1999年の技報には、純正オイル(最も廉価のもの)で、1万5千km程度で酸化劣化防止剤などの添加剤が劣化し、その後の1万5千kmでオイル自体が劣化するので、最低でもオイルの寿命は3万kmはある(ばらつきの最悪値)と明確に記載してあります。オイル温度が低すぎても、混入したガソリンや水分の蒸発が少なくなるため劣化を早めることにはなりますが、1万5千kmの交換時期を守れば充分なのです。
ただし、メーカーのメンテナンスノートには厳しい使い方を常用する場合は1万5千キロより短距離(半分程度)での交換を指示していますが、少なくても日本の環境下では、1万5千km以下で交換する必要性は全くないと言っていいでしょう。
欧州車では、アウトバーンでの高速走行(140~160km/h×140h、130℃程度)を想定して交換時期を2~3万キロとしていることから、この地域では耐熱性を1ランク上げたベースオイル(合成油)を使用するか、エンジンの冷却性を向上し10℃程度油温を低減させているのです。特に地球環境に配慮してこのような対応をしているのでしょうが、日本のユーザーの地球環境に対する意識との違いには驚かされます。日本も、もっとオイルを大切に使おうという意識がなければならないと思います。
なお、オイルの劣化度はオイルレベルゲージの先端部に付着したオイルを指に触れ、その色と粘度の具合で判別できるようなものではありません。黒ずんでいるからといって劣化していると判断するのは大きな間違いですし、温度によって大きく変化するオイル粘度が正常かどうか見分けることは実際には困難です。このような判別法では、オイル交換の一週間後にガソリンスタンドでまたオイル交換を勧められるようなはめになっても不思議はありません。簡便な分光分析機などで簡単にオイルの劣化度を検出できるような装置がガソリンスタンドや整備工場などに配備されることが望まれます。
以上のことから、3千kmで交換するということは、まだ新品のオイルを捨ててしまっているようなものなのです。
また、オイルフィルターは、新品時のメッシュは粗く作ってあり、小さなごみ(10~100ミクロン程度)は通しやすく、1~2万km程度走行後には適当に目詰まりし、適正なフィルタ機能(10ミクロン以上は通さない)を発揮するものなのです。従って、6千kmで交換すれば適正な機能を発揮する前にフィルターを捨ててしまっていることになります。
ヨーロッパや米国では、オイル交換2回に対して1回、または1年毎に交換することを推奨しているメーカーがほとんどです。実際、私は3万kmでフィルターを交換(オイル交換の2回に1回)していますが、これでも早すぎるのではないかと思っているほどです。3千kmでオイルを交換することは、1万5千kmで交換する場合と比較して、炭酸ガス排出量で約1.2%、燃料費で7%程度の増大(平均燃費11km/リットル、交換オイル4リットル/3千円と仮定)となります。
また、エンジンオイルには微量の塩素が含まれていることから、廃油処理のために通常の焼却炉で燃やせば、極めて有害とされるダイオキシンが発生することになりますが、一般ユーザーにアピールされることが少なく、ユーザの意識も全くないのは残念です。
カー用品店やガソリンスタンドでは、「オイル交換は3千km毎、走行距離が短くてもオイルの酸化劣化があるので、半年に一度は交換、オイルエレメントはオイル交換2回に1回交換(6千km毎)」を推奨しているようですが、現在のほとんどの日本製乗用車(オイルが高温となるターボ車は除く)のメンテナンスノートには1万5千km毎または1年毎にオイルとエレメント(フィルター)を交換することが記載されており、これが技術的に充分保証できる交換時期です。
町の整備業者にとってオイルはドル箱であり、毎月の売上目標を達成するためにカーメーカーが責任を持って記載している交換時期と違って、極端に短い交換時期を勧めているのです。ちなみに、ヨーロッパ製の乗用車のオイル交換時期は2~3万km毎であり、日本からの輸出車は1万5千km毎であることが、ヨーロッパのユーザーには地球環境とユーザー維持費の観点で、不評であると言われています。
自動車のエンジニア(私達)は、地球環境の悪化や化石燃料の枯渇を防止するため、燃費の低減とオイル交換時期の延長に、血の滲むような努力をしているのです。オイル交換時期の延長には、オイル自体の長寿命化やエンジン冷却システムの強化などをオイルメーカーと共同で開発してきています。
しかし、一般の整備業者などが商業主義によってオイルの交換時期をやたらに短く設定すると共に、モリブデン(摩擦係数低減剤)などの特殊な添加剤を入れて高価なオイルを販売していることに対して、私はいつも苦々しく思っていました。
しかも、オイルが一般の人にとっては得体が知れず、特に寿命に関する知識が全くないことにつけ込み、劣化オイルによるエンジン本体のダメージをことさらに強調し、何の根拠も無しに、まことしやかに短距離・短期間でのオイル交換を推奨する雑誌類が後を絶たない日本の現状は嘆かわしい限りです。また、オイルを開発しているエンジニア自身も、オイルが金のなる木である現実の前には、真実を語ろうとしない面もあります。
オイルの劣化は、高温時の酸化によるベースオイルや添加剤の劣化、軸受けや歯車噛み合い部での機械的剪断によるオイルの鎖状分子の破壊(剪断劣化)、ガソリンの混入などによる希釈(粘度低下)、水分の混入(エンジンが加熱・冷却を繰り返し外気が導入・排出することによって、水分が混入)による変質などが挙げられます。
上記のうち酸化と剪断による劣化が主体で、その中でも高温による酸化劣化が支配的です。ただ、オイルの酸化は100℃以上の高温では問題になりますが、温度に対して指数関数的な劣化特性(10℃上昇毎に寿命が1/2と言われている)を示すことから、常温でしかも太陽光に完全に遮断されたエンジンのクランクケース内で、オイルが実用上問題となる程に酸化劣化するとは到底考えられません。(100℃で600hの寿命とすれば、130℃では75h、40℃では1,600日の寿命)
従って、半年に一回または3千km走行でオイルを交換せねばならない理由はありません。メーカー指定の1年毎交換もどちらかと言えば、オイルによる利益確保が主目的ではないかと思っています。(日本では、今まで誰も突っ込んで問題にしたことがなかった)
以上のように、オイル劣化の進み具合は、オイル温度とエンジン負荷とに左右されるので、ベンツやBMWなどドイツ車の一部では、車載コンピュータでそれらを常時監視し、オイルの劣化度合いを演算して、寿命が来たと判断されるときには警告灯によってユーザーに知らせるなど、非常に合理的にオイル交換を指示するものもあります。
日本車は全て走行距離と年月で単純に交換時期を表示していることから、真夏の高温時に山岳路を走行するなどの厳しい条件もある程度想定して1万5千km(平均時速25km/h×600h、100℃程度)が設定されているのです。従って、実際の一般走行ではオイル温度はさらに低く、劣化も少ないので、推奨値以上の走行距離でもオイルは充分に使用可能なのです。
三菱石油の1999年の技報には、純正オイル(最も廉価のもの)で、1万5千km程度で酸化劣化防止剤などの添加剤が劣化し、その後の1万5千kmでオイル自体が劣化するので、最低でもオイルの寿命は3万kmはある(ばらつきの最悪値)と明確に記載してあります。オイル温度が低すぎても、混入したガソリンや水分の蒸発が少なくなるため劣化を早めることにはなりますが、1万5千kmの交換時期を守れば充分なのです。
ただし、メーカーのメンテナンスノートには厳しい使い方を常用する場合は1万5千キロより短距離(半分程度)での交換を指示していますが、少なくても日本の環境下では、1万5千km以下で交換する必要性は全くないと言っていいでしょう。
欧州車では、アウトバーンでの高速走行(140~160km/h×140h、130℃程度)を想定して交換時期を2~3万キロとしていることから、この地域では耐熱性を1ランク上げたベースオイル(合成油)を使用するか、エンジンの冷却性を向上し10℃程度油温を低減させているのです。特に地球環境に配慮してこのような対応をしているのでしょうが、日本のユーザーの地球環境に対する意識との違いには驚かされます。日本も、もっとオイルを大切に使おうという意識がなければならないと思います。
なお、オイルの劣化度はオイルレベルゲージの先端部に付着したオイルを指に触れ、その色と粘度の具合で判別できるようなものではありません。黒ずんでいるからといって劣化していると判断するのは大きな間違いですし、温度によって大きく変化するオイル粘度が正常かどうか見分けることは実際には困難です。このような判別法では、オイル交換の一週間後にガソリンスタンドでまたオイル交換を勧められるようなはめになっても不思議はありません。簡便な分光分析機などで簡単にオイルの劣化度を検出できるような装置がガソリンスタンドや整備工場などに配備されることが望まれます。
以上のことから、3千kmで交換するということは、まだ新品のオイルを捨ててしまっているようなものなのです。
また、オイルフィルターは、新品時のメッシュは粗く作ってあり、小さなごみ(10~100ミクロン程度)は通しやすく、1~2万km程度走行後には適当に目詰まりし、適正なフィルタ機能(10ミクロン以上は通さない)を発揮するものなのです。従って、6千kmで交換すれば適正な機能を発揮する前にフィルターを捨ててしまっていることになります。
ヨーロッパや米国では、オイル交換2回に対して1回、または1年毎に交換することを推奨しているメーカーがほとんどです。実際、私は3万kmでフィルターを交換(オイル交換の2回に1回)していますが、これでも早すぎるのではないかと思っているほどです。3千kmでオイルを交換することは、1万5千kmで交換する場合と比較して、炭酸ガス排出量で約1.2%、燃料費で7%程度の増大(平均燃費11km/リットル、交換オイル4リットル/3千円と仮定)となります。
また、エンジンオイルには微量の塩素が含まれていることから、廃油処理のために通常の焼却炉で燃やせば、極めて有害とされるダイオキシンが発生することになりますが、一般ユーザーにアピールされることが少なく、ユーザの意識も全くないのは残念です。
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