永遠も半ばを過ぎた

フリーデザイナー兼カメラマンの苦言・放言・一家言

道新記事の成果は…?

2016/03/14(月)
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北海道新聞 (2016.02.23) に掲載されました


先月、所属する札幌市少年軟式野球連盟公認審判員の「人手不足と高齢化」について北海道新聞に取材され、札幌圏版に大きく掲載された。(上写真)

アマチュア野球の審判の世界は「少子高齢化」ならぬ「少若高齢化」が顕著で、どこも若手審判員の発掘と育成が急務となっている。我が連盟も例外ではなく、このままでは10年後には半減する可能性もある深刻な状況なのだ。

そのような状況下、長年にわたり審判団の活動を統括管理してきた事務局長が健康上の理由により退任を表明、そして世代交代という目的もあって私が後任に指名・承認され、今年から大役を仰せつかることになった。

その初仕事…というわけでもないが、知人の道新記者に記事を書いてもらい、大きく宣伝してもらった…という次第だ。道新については日頃からその偏向性や編集姿勢を批判しているのだが、まぁ「それはそれ」として…

そして、問い合わせは約20件。中には記事の主旨を勘違いしている方もいて、個人的に開催した「説明会」に集まったのが10名だった。そこでは組織の仕組みや大会のことなどの他、後になって「こんなはずじゃなかった」と言われないよう、事前に知っておくべき「悪い話」(後述)も遠慮なくさせてもらった。

そのうえで意欲のある方に、去る13日に開催された「審判員学科講習会」への出席を呼びかけたところ、4名が足を運んでくれた。

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審判員学科講習会(13日)の様子

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問い合わせ電話→20件、説明会参加→10名、学科講習会参加→4名

道新記事による「最終成果」は4名…ということになったわけだが、果たしてこれが十分な数字なのかどうかは分からない。ただ、世間には「野球の審判なんて何が面白いのか」という意識が圧倒的だという実情を踏まえると、たとえ4名でも十分な成果なのかも知れない。

ところで、先述した「悪い話」とは何か―。これは主に3点ある。

【1】一切の審判道具は自己負担で揃えなければならない。
 ユニフォーム類はもちろん、球審用のマスクやプロテクターなど一切の道具は貸与制ではなく、自前で用意しなければならない。審判員は基本的にボランティア活動であり「仕事」ではない。また、道具は「自分に合ったものを何十年も使う」というのが前提なので、貸与制は馴染まないのだ。
 そのうえで、最廉価のものを揃えたとしてもシミュレーションでは5万円以上の出費となり、これに驚いた声は多かった。

【2】あまりに複雑な野球のルール
 テレビでプロ野球や高校野球を観ているだけではなかなか理解されないが、数あるスポーツの中でも野球のルールがいちばん複雑だと言われている。ルールは毎年改正(追加・修正・削除)され、未だに「完成されていない」のだ。
 プロ野球の監督や選手でさえ「半分も知らない」と言われるルールを覚えなくてはならないのが審判であり、そのための猛勉強が必要である。

【3】「メカニクス」の存在
 これもテレビ観戦だけで審判をイメージしていた人にはショックが大きかったようだ。例えば塁審の場合、自分の担当塁だけを見てアウトかセーフかだけを判定する「簡単な作業」だと思われがちだが、走者の状況と打球の行方によっては二塁審なのに一塁へ走ったり三塁へ走ったりしなければならない。
 そういうパターンが実に128通りあり、ルールより先にまずはこれを頭に叩き込む必要がある。(参考リンク:審判メカニクス)


…と、せっかくの意欲を削ぐような話が多かったわけだが、審判になった後で「聞いてなかった。やっぱり辞める」と言われるよりはずっとマシなわけで…。

事実、説明会の後に何人もの参加者から電話があったが、異口同音に「もっとお気楽な世界だと思っていたが、審判がこれほど大変だとは知らなかった。自分には無理そうなので、諦めます」と話しており、200ページを超えるルールブックやメカニクスを覚えるのは負担に感じたようだった。

う~む…やはり審判界では「人材の発掘」自体が永遠のテーマなのか…

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アマ野球審判員もいよいよ始動

2015/02/01(日)


プロ野球12球団が一斉にキャンプインした本日、道内の社会人・大学・高校・学童などアマチュア野球審判員のための技術研修会(座学)が札幌大学で行われた。NPO法人北海道野球協議会の主催で、参加人数は約190名。

(財)日本野球連盟北海道地区連盟審判部長らを講師として招き、昨季における各現場でのトラブル事例などからルール適用上の解釈について約3時間の講義が行われた。

プロアマ問わず、野球は「公認野球規則」というルールブックに基づいてプレーされるのだが、毎年ほぼ例外なく一部が改正される。これは、「このようなプレーがあった場合にはどのようにルールを適用・解釈し、どのように処置すればいいのか」という実例や疑問が際限なく出てくるためで、それだけ野球が複雑なルールに基づいており、いつまでもルールブックが「完成」しない所以でもある。

例として、今回の資料にあったケーススタディの一例を以下に挙げてみる。

安全進塁権と得点との関係 (4.09注2)(7.04b原注)

 打者および走者に安全進塁権が与えられた時、二死後ある走者が他の走者に先んじたためにアウトになった時は、そのアウトになった走者よりも後位の打者または走者の得点が認められないことはもちろんであるが、たとえアウトになった走者より前位の走者でも第三アウトが成立するまでに本塁を踏まなければ得点は認められない。
 ただし、二死満塁で打者が四球を得た場合、他のいずれかの走者がいったん次塁を踏んだ後にアウトになった時に限り、その第三アウトが成立した後に三塁走者が本塁を踏んでも得点と認められる。

野球ルールに一家言を持っている方でも、一読しただけでは理解できないのではないだろうか…。

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他にも、例えば塁間で走者と野手(または打球)が接触した場合、審判はその状況によって「守備妨害」か「走塁妨害」かの判断を一瞬でしなければならない場面も多く、これがなかなか大変なのである。(プロ野球でも誤審あり)

この研修会を皮切りに、今後は自身が所属する連盟で「審判部総会」「技術研修会」「学科講習会」などの勉強会が目白押し。しかも、今季からは技術指導員という立場を拝命したため、ますますこの世界から抜けられなくなり…

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審判@札幌ドーム

2014/08/23(土)
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「ファイターズジュニア王座決定戦2014」 準決勝 第1試合より

仕事や他の予定が入らない限り、少年野球審判に勤しむ毎週末。加えて今年は道新スポーツ主催の社会人野球リーグ(朝野球)に駆り出される機会も多く、8月(本日時点)に裁いた試合数はすでに30を超えた。

毎度のことなので、いちいちこのブログで「○○で審判をした」などという報告はしていないが、今回は特例ということで…。

北海道日本ハムファイターズ球団が「北海道の野球少年たちのために」と、07年より開始した「ファイターズジュニア王座決定戦」。道内全域700超の少年野球チームが14ブロックの予選大会に参加し、決勝トーナメントを札幌ドームで、プロ野球と同様の演出(スコアボードや場内アナウンス)により行う大会である。

私は準決勝の第2試合を割り当てられ、木の花ブラックジャガーズ〈札幌支部〉vs岩見沢東ブラックベアーズ〈空知支部〉の試合に参加した。

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北海道のアマチュア野球の聖地が「円山球場」であることは揺るぎないのだが、「プロ球団の常用球場」である札幌ドームの電光掲示板にこうして自分の名前が載るのも、円山とはまた別の感覚があって気分がいいものだ。

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また、ここまで勝ち抜いてきたチーム同士の試合になるとピッチャーの投球速は110km/hを超え、中学生と遜色ないプレーレベルである。

ファイターズが「レジェンドシリーズ」と銘打った西武ライオンズ戦の真っ只中なので、それに合わせるように第1試合の開始が午前7時という強行軍だった。選手や応援団もさぞ早起きしたことだろう。

高校野球のように一般客が観戦することはなく、各チームの応援団がベンチ上方に陣取るだけだったが、それでもプロ野球さながらの「鳴り物応援」は、音が逃げないドーム球場においてはかなりの音量である。

これが数万人にもなるプロ野球では、どれほどの集中力が求められているのだろうか。ゴルフやテニスなどの試合では咳払いすら許されないというのに…。

ともあれ、アマチュア審判員ではなかなか経験できない球場ということで今回は札幌ドームをネタにしたが、やはり野球というスポーツはお天道様の下でやるのがいちばん…と改めて実感した次第。

今シーズンも残り2ヶ月、頑張りまっせ

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球審の白井です(半ギレ)

2014/08/07(木)

NPB随一の人気者(?)、白井一行審判員(左)

仕事が入っていない夜、私はテレビでプロ野球観戦をすることが多い。札幌に住む私はもちろん、北海道日本ハムファイターズが好きではあるのだが、贔屓チームというより「球審は誰か」という価値観で試合を選ぶので、観るのは必ずしもファイターズとは限らない。

プロ野球の審判情報は、「NPB審判情報」というツイッターで毎日確認できる。対戦カードごとの球審と塁審名が逐一更新されるのだが、球審に「白井」という名前があった時、私は密かな楽しみを実行している。

その前に、この「白井」という審判員のことを簡単に説明しよう。

白井一行氏は、大半のプロ野球ファンは気にもしていない審判員という存在の中で、おそらく最も有名な人物ではないだろうか。大半の審判員が元プロ野球選手で、(失礼ながら)「大成できなかった末の転向」というケースが多い。

そんな中、白井氏は専門学校を卒業後すぐに審判になった変わり種で、自ずとデビュー年齢も非常に若い「エリート」ともいえる。一方で、「(プロ)選手経験がない」ということは「選手の気持ちも分からない」わけで、選手や監督への不遜な言動で物議を醸すことも多く、また「誤審が多い」という評価も少なくない。

さらに、ある企画のインタビューでは自身の「退場宣告の多さ」を自慢気に語っているが、「伝家の宝刀を気軽に乱用している」として批判は多い。たが、白井氏が有名になったいちばんの理由は、「奇声」とも言われるストライクコールにある。論より証拠、まずは動画↓で確認して頂きたい。

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このコールの大きさは、特にラジオ中継を聴いている時に際立つ。なにせ実況アナの音声よりも大きく耳に響くのだ。そのため、映像がなくても「今日の球審は白井か…」と特定できる唯一無二の審判員なのである。

ちなみに、「NPB審判情報」は、球審が白井氏の時はこのように記している。

また、度重なる傲慢な態度に、ファンは「半ギレ」という修飾語を施し、白井氏の場内放送に見立てたこんなフレーズがネット上に出回った。

【えー球審の白井です(半ギレ)。ビデオ判定の結果、ビデオが私と異なる判定を映していたため、ビデオを退場としプレーを続行します】―

現在はこれを基に、オリジナルを作るのがファンの間で“プチ流行”している。

そして、先述した「“白井球審”の時の密かな楽しみ」とは、「球審 白井」というキーワードでツイッター検索をしてファンの反応を見ることで、数々のツイートがいつも楽しませてくれる。そのキャプチャ(一部)がこちらである。実に多くの「悲喜こもごも」がツイートされ、例の「オリジナルフレーズ」も散見される。

「球審担当」というだけで、これほど反応がある審判員は白井氏くらいのもの。良くも悪くも、人々から注目されるのは人気の裏返しであり、「愛される個性派」といっていいだろう。

さて、次の「奇声」は、いつ、どのカードなのかな…

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少年野球という「教育」

2014/06/24(火)
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北海道新聞(23日付朝刊)

昨日(23日)の朝、北海道新聞を開いてびっくり仰天
自身が審判員として所属する少年野球連盟の某チーム監督が、選手に怪我を負わせたらしい。この記事だけでは事情が分からないので何とも言えないが、連盟はこの問題がしばらく尾を引きそうである。(最後部に報道記事)

ところで、少年野球の目的とは何だろう…。プロ野球や社会人野球と決定的に違うのは、「(野球を通じた)教育」であるということだ。野球技術を習得させて身体を丈夫にし、集団競技として仲間を思いやる心を育み、人に対する礼儀や挨拶を覚えさせるのである。

ところが、現実にはこの目的から大きく逸脱した「勝利至上主義」に走る指導者は少なくないという。そして、保護者にも様々な問題点が見受けられ、学童野球の本質を理解していないケースが目立っているようだ。

以下に、指導者・保護者それぞれの「悪質な例」を、Wikipediaの「少年野球」から引用してみる。(原文ママ、ただし誤字は修正)

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【悪質な指導者の言動例】
・ミスをした後に、「何年やってんだよ!」
・チャンスで凡打した子供に「あれほどライナーを打てといっただろう!」
・「教えなくても出来て当然」といった考えを持っており、出来ない子供に罵声、怒声を浴びせる。
・結果が全てで、過程の評価を下さず、子供に失敗から学ばせようという姿勢が欠落している。
・「点が入ったのはお前のせいだ」、「負けたのはお前のせいだ」といった暴言を吐き、ミスをした選手を起用したのは指導者であり、指導したのもまた自身であるという視点が欠落している。
・挨拶や礼儀、道具の整理整頓といった事は指導しない。
・「お前しかピッチャーはいない。イタイだ、カユイだ言うな!」などと子供の健康への配慮をしない。
・短い時間の間に同じ失敗を繰り返している子に対して、叱ったり諭したりする事はなく最終的に出来たときにのみ褒める。

【悪質な保護者の言動例】
・相手チームの選手(子供)に大声で野次を飛ばす
・打撃不振がつづくある選手にスクイズをさせて失敗した。試合後「うちの子は打撃が得意なのになぜ打たせなかった」と周囲に騒ぎ立てる。
・審判の判定に対して大声で批判する。これは子供の教育上好ましくない事は当然として、学童スポーツは公式審判員以外にも、保護者がボランティアで参加している場合が多く、そのような批判はボランティアの参加意欲を低下させ、以後の大会運営に悪影響を与えるといった思慮がない。
・ある監督が試合後、一人の男性に呼び止められ「あの投手はフォームを改造したほうが言い」「あの2人はボジションを入れ替えたほうがいい」「もっと走り込みをさせたら?」などと進言された。その人物と別れたのち、別の保護者から「○○君のお父さんです」と聞かされ驚いた。
・指導者や他の保護者への的はずれの批判を声高に訴え、周囲に賛同を求め、全体の和を乱す。

-引用ここまで-

試合を通じて指導者を見てきた審判にとっては、さながら「あるある集」みたいなものだが、確かに「そんな理不尽な」と思うほどの叱責がベンチから飛んでくるのは日常茶飯事だ。ただ、選手たちも慣れっこなのか平気な顔をして聞き流している子ばかりで(心の中までは読めないが…)、怒鳴られて泣き出すという光景はほとんど見ない。

保護者の事例に関しては、少なくても試合中は熱心に応援こそすれ、大声での野次や批判を聞くことはなく、一定の礼節はわきまえている気はする。繰り返すが、あくまでも審判なので「試合中」しか分からないのだが…。

教育の場である少年野球とはいえ、ほとんどの指導者は教員免許などを持つ「教育のプロ」ではない。野球観も指導方法も十人十色なのだが、それは学校の教師も同様で、結局は「個性」ということになる。

どれほど口汚く罵る監督でも、それを保護者が了承して我が子を預け、子供たちもそんな監督を信頼して汗をかいているのであれば、部外者が価値観を押しつける必要はないのではないだろうか。(もちろん体罰なら許されないが…)

逆に言えば、それほど厳しい監督の下で卒団までやり抜けば、相当の胆力が身につくはずである。休日も一日中、室内ゲームばかりやっている子供に比べれば、はるかに強い精神力や社交性が身についていることだろう。また、昨今は子供を上手に叱れない親が増えているらしいが、「だからチームに預けている」という保護者も中にはいるのだ。

平日の夕方は練習、週末は試合でと、手弁当で子供たちに野球を教えている(コーチを含む)指導者は尊敬に値する。今回の「事件」の背景には、何らかの事情や偶然があったのではないかと思いたいのだが、こればかりは成り行きを見守るしかない。子供の怪我も含めて大事に至りませんように…。


少年野球の監督体罰か 札幌・手稲の小4転倒、頭骨折

札幌市手稲区の少年野球チームの男性監督(58)が5月中旬、指導していた小学4年の男子児童(10)のユニホームを引っ張って転倒させ、頭の骨を折るけがを負わせていたことが22日分かった。監督が他の選手に体罰を繰り返していたとの証言も複数あり、札幌手稲署が関係者から事情を聴いている。

複数の関係者によると、監督は5月20日夕、手稲区内のグラウンドで練習中、選手たちに対し、「整列の仕方が悪い」などと注意。その際、1人の男子児童を手前に引っ張り、転倒させた。児童は頭の右側を地面にぶつけ、帰宅後、嘔吐(おうと)を繰り返したため、病院で受診。「右側頭骨骨折」で全治1週間と診断された。その後、この児童は練習を休んでいる。これを受け、男子児童の両親らが札幌手稲署に相談。同署は両親や児童、他の保護者から話を聞くなど、事実関係の確認を進めている。

チームは1975年に結成され、軟式野球の全道大会で優勝したこともある名門。現在は、主に手稲区の同じ小学校に通う2~6年生の男女十数人が所属している。同区内に住む監督は自営業の傍ら、20年以上前から指導を行っている。

体罰問題で監督聴取へ 札幌・手稲区少年野球連盟

札幌市手稲区の少年野球チームの男性監督(58)が5月中旬、指導していた小学4年の男子児童(10)に頭の骨を折るけがを負わせた問題で、手稲区少年軟式野球連盟は23日夕にも、加盟する全12チームの責任者を集めた緊急会議を開き、この監督から事情を聴く。

同連盟は4月に指導者講習で体罰の撲滅策を話し合ったばかりという。大島克博会長(64)は「報道で知って驚いた。当日の状況を監督本人から詳しく聴きたい」と話した。また、札幌市少年軟式野球連盟の小室雅義会長(71)は「至急調査して今後の対応を検討する」としている。

男児がけがをしたのは5月20日夕の練習中で、監督にユニホームを引っ張られて転倒し、側頭骨を骨折した。監督が以前から体罰を繰り返していたとの証言もあり、札幌手稲署が関係者から事情を聴いている。

 (いずれも北海道新聞 2014.06.23)


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ルールの番人…「審判」という立場

2014/05/18(日)



まずは、上の動画をご覧頂きたい。
阪神×広島の2軍の試合で、低めの投球を「ストライク」と判定された阪神側の平田監督が、球審に対して猛抗議するシーンである。誤審シーンをピンポイントで寄せ集めた動画なので詳細は不明だが、これより前から「微妙な判定」が繰り返され、ついに堪忍袋の緒が切れた…という事情だったのかも知れない。

とはいえ、たとえ監督でも審判の判定に抗議することは認められていないため、ましてこの言動は許されるものではない。これは決して「審判が偉い」ということではなく、ルールブックにそう定められているのだ。

公認野球規則 9.02 審判員の裁定
(a) 打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチ、または控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。


監督に認められているのは、審判の判定が「ルールの適用を誤っている」疑いがある時のみ、当該審判にその訂正を「要請できる」だけである。プロ野球では珍しくもない「抗議シーン」も、本来は明らかなルール違反なのだ。

そもそも、この投球は本当に平田監督が言うような「クソボール」なのだろうか。動画を元にボールの軌道を再現した画像を作ったので、確認してみよう。

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この角度では何とも言えないが、少なくてもこの映像だけで判断する限り「低めいっぱいのストライク」に見えないこともない。では、「ストライク」の定義は何か―。公認野球規則では、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」と定めている。

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写真:Wikipedia 「ストライクゾーン」より

上の写真で分かるように、打者と捕手との距離が1メートル近いことを考えると、ボールは本塁上を通過する際に「ひざ頭の下部より上」を通っているように見える。「クソボール」に見える理由があるとすれば、球筋が山なりのため捕球時のミットの位置が低く、さらに勢いで押し下げられているためとも考えられる。

何にせよ、ルール上ではどんな悪球でも審判が「ストライク」と言えば、それはストライクなのだ。先の動画で平田監督は球審に対し「勘違いしたらアカンよ~」と言っているが、勘違いしているのは監督の方であり、実況や解説者も同様だ。

繰り返すが、決して審判が「偉い」のではなく、野球が「審判員の権限のもとに、本規則に従って行われる競技」(公認野球規則1.01)と定義されている以上、それが“ルールに従った立場”なのだ。

また、日本のプロ野球には他国にない「アンフェア精神」が一部あり、国際大会では毎回ヒンシュクを買っているという。まずは次の写真を見て頂きたい。

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特に珍しくないシーンに見えるが、一塁での判定の際、攻撃側のコーチャーが「セーフ」のジェスチャーをしている。これは「一度下された判定は覆らない」のを承知のうえで、審判が「つられてセーフにしてしまう」ことを期待しているためだ。

このように卑怯で姑息なことをしていながら、「予想外のアウト判定」には猛烈に抗議し、挙げ句に「誤審だ!」と騒ぐのである。これが国際大会で「日本野球は一塁審判が二人いる」と揶揄され、アンフェアな行為として知られている。正しい判定をしてほしいのなら、まずは黙って見ていろと言いたい。

   ◇

先日、約25年のキャリアを持つベテラン審判員が連盟を去った。2014年から「投手の、3塁への偽投の禁止(=ボーク)」が公認野球規則に付加されたことに伴い、これを含めた全種類の「ボーク宣告の徹底」がシーズン前に審判団で確認されたことに起因している。

当然ながら、少年野球は大人に比べて技術が未熟で、ルールに関しても無知な場合が多い。特に投手はボークを犯すケースが多いのだが、「可哀想」という理由でそれを取らない(取れない)審判は決して少なくない。数ある判定(裁定)の中で、最も審判の「主観」と「決断」に左右されるのがボークだ。

走者に無条件進塁を与えることになるボークは、時に試合の流れを大きく変える。そのため、それを視認しても投手の気持ちを思ってか「ザッツボーク」と言えない。脱退した審判も、長いキャリアの中でおそらく一度もボーク宣告をしたことがなく、「ボークは厳しく取れ」という連盟の方針について行けなくなったという。

「まだ子供だから(ボークは)仕方がない」という考え方もあるだろうが、「子供だからこそ“ルール遵守”を教育しなければならない」というのが連盟のスタンスである。ボークは「走者を欺く行為」という視点から禁止されているため、「不注意」というケースが大多数の少年野球でも、それは「ルール」として厳格に運用しなければならないのである。

審判は「きちんと判定できて当たり前」という立場。非難されることはあっても、決して褒められることはない。「試合に勝てばチームの実力、負ければ審判のせい」などとも言われ、割に合わない立場だ。だが一方で、野球というスポーツの難しさと奥深さがいちばんよく分かる立場でもある。

「野球観戦オヤジ」たちには、ぜひこの世界に入ってほしいのだが…

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球春到来

2014/05/03(土)


審判員として所属する札幌市少年軟式野球連盟と毎日新聞社の主催による「第36回少年軟式野球札幌選抜大会」が始まり、札幌・円山球場で開会式が行われた。

昨年の秋に市内10区での予選を勝ち抜いた全32チームによるトーナメント戦で、本日から3日間の日程で行われる。毎年、GW期間に行われるこの大会を皮切りに本格的な少年野球シーズンが始まるのだ。

連盟に所属する100余名の審判員らの平均年齢も毎年上昇し、本年度は69歳という「大台目前」である。炎天下で一日4~5試合もグラウンドに立ち続けるだけあって「体力自慢」ばかりではあるのだが、それでも寄る年波には勝てぬとばかりに顔を合わせれば血圧と病院の話題で盛り上がる。

とはいえ若き新人が入ってくるでもなく、悲しいことに46歳の私でさえ「超若手」に分類される。どんな世界やねん…

開会式後の第一試合では私が球審を務めたのだが、自分が写っている写真が珍しく手に入ったので、照れくさいが載せちゃう。

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今シーズンも頑張るぞ~
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「珍プレー賞」ゲッツ (σ^Д^)σ

2013/11/02(土)


審判員として所属する手稲区少年軟式野球連盟は先月で今シーズンの全日程が終了し、今夜の「納会」を待つばかりとなっていた。

すると、古巣の豊平区連盟から「審判が足りない」と応援要請、急遽お手伝いに…。豊平区内の全チームを4地区に分け、各チームの選抜選手たちによる地区対抗オールスター戦が4試合行われた。

閉会式では活躍した選手に様々な賞が授与されたが、なんと審判である私には「珍プレー賞」が…

何やら、球審を務めた試合でズボンのチャックが全開だったのが評価(?)されたようだ。上着の下にインサイドプロテクターを着用する際、一度ズボンを下げて裾をしまう必要があるのだが、その時の「チャック忘れ」らしい…。これで審判としての威厳は地に落ちたわ…。

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そして夜、手稲区連盟の納会が盛大に行われた。連盟役員、各チームの監督・コーチ陣、審判団、来賓として地元の議員、そして交流区である西区連盟からも数人参加して頂いた。

各チーム関係者が今期の反省を踏まえ、来季への希望を胸に抱きながらの納会ではあるのだが、共通の悩みが「部員不足」だという。昨今の少子化に加えwサッカー人気が台頭していること、そして小学生といえど厳しい指導で知られる少年野球の世界に我が子を預けるのを躊躇する親も少なくないという。

同様に、審判の世界も新人が入ってこないまま高齢化が進む一方のため、いったい10年後にはどうなっていることやら…と心配は尽きないのである。

30~40代のそこのアナタ、審判やりませんか~?
最初にルールとフォーメーションを覚えるのが大変ではあるけれど…(笑)

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スタンドつき屋外球場は気持ちいい

2013/08/10(土)

麻生球場での試合の様子(本文とは別の大会にて)

第36回少年軟式野球 札幌選手権大会(北海道新聞など主催)が開幕した。札幌の全10区で選抜された計32チームによるトーナメント戦で、4球場に分かれ本日から3日間かけて行われる。

普段、少年野球の試合は公立公園の野球場などで行われるのだが、大きな大会になると円山球場や麻生球場、さらに北海道日本ハムファイターズが主催する「ファイターズジュニア王座決定戦」の決勝トーナメント戦は札幌ドームで行われるため、選手たちはこれら大舞台での試合を目標に日々練習している。

本日の札幌選手権大会に審判員として参加した私は麻生球場(北区)の担当になったが、スタンドつきの広い屋外球場は何度やっても気持ちがいいものだ。(とはいえ、観客は選手の保護者と次試合のチームぐらいなものだが…)

その逆に、意外とやりにくかったのが札幌ドームである。

先述した「ファイターズジュニア王座決定戦」は日ハム球団の主催とはいえ、入場料収入が見込めるイベントではないため、照明や空調にかける経費は徹底して抑えられている。つまり「蒸し暑く、薄暗い」中での試合なのだ。しかも、急勾配のスタンド席はグラウンドに立つと圧迫感が大きく、息苦しくさえある。

ドーム球場は雨天時や夜間も行えるのが最大の利点だが、やはり野球は多少の悪天でも屋外でやるのがいちばん!なのだ。

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ルール談義

2013/08/04(日)
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私は札幌市少年軟式野球連盟の審判部に所属しているのだが、さらに市内10区のいずれかに登録しなければならない。それは必ずしも自分の居住区である必要はないのだが、手稲区在住の私は同区の登録だ。とはいえ、約3年前までは豊平区に居住していたため、登録も豊平区だった。

豊平区では毎年この時期に「シーズン前半の慰労」として審判長宅(の車庫)で焼肉宴会が行われるのだが、それが本日だったので、私は「豊平区OB」として図々しく参加した。

午後3時から約7時間にわたる宴会だったが、話題は首尾一貫して「野球」「審判技術」「ルール」であった。特にルールの解釈では意見が一致せず、白熱した議論が展開された。自身も含めて、みんな本当に野球が好きなんだなぁと改めて思ったものだ。

試合の現場では、ベンチ(監督やコーチ)から審判の判定に強烈なヤジや文句が飛ぶこともある。本来、少年野球の目的とは、「ルール遵守」「礼儀と秩序」「仲間(他人)への思いやり」などを教える【教育現場】であるはずなのだが、勝利のためならマナー違反のプレーさえ選手に強いる監督も稀に存在する。

そのような監督ほどルールを知らず、審判への珍妙な抗議で逆に恥をかくことも多いのだが、今日のルール談義にぜひとも参加させてやりたかった…(笑)

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Profile / プロフィール

 山下 浩

Author: 山下 浩
 
・グラフィックデザイナー
・スチールカメラマン
・札幌市在住 1967年生

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