北海道新聞 (2016.02.23) に掲載されました先月、所属する札幌市少年軟式野球連盟公認審判員の「人手不足と高齢化」について北海道新聞に取材され、札幌圏版に大きく掲載された。(上写真)
アマチュア野球の審判の世界は「少子高齢化」ならぬ「少若高齢化」が顕著で、どこも若手審判員の発掘と育成が急務となっている。我が連盟も例外ではなく、このままでは10年後には半減する可能性もある深刻な状況なのだ。
そのような状況下、長年にわたり審判団の活動を統括管理してきた事務局長が健康上の理由により退任を表明、そして世代交代という目的もあって私が後任に指名・承認され、今年から大役を仰せつかることになった。
その初仕事…というわけでもないが、知人の道新記者に記事を書いてもらい、大きく宣伝してもらった…という次第だ。道新については日頃からその偏向性や編集姿勢を批判しているのだが、まぁ「それはそれ」として…

そして、問い合わせは約20件。中には記事の主旨を勘違いしている方もいて、個人的に開催した「説明会」に集まったのが10名だった。そこでは組織の仕組みや大会のことなどの他、後になって「こんなはずじゃなかった」と言われないよう、事前に知っておくべき「悪い話」(後述)も遠慮なくさせてもらった。
そのうえで意欲のある方に、去る13日に開催された「審判員学科講習会」への出席を呼びかけたところ、4名が足を運んでくれた。
審判員学科講習会(13日)の様子
問い合わせ電話→20件、説明会参加→10名、学科講習会参加→4名
道新記事による「最終成果」は4名…ということになったわけだが、果たしてこれが十分な数字なのかどうかは分からない。ただ、世間には「野球の審判なんて何が面白いのか」という意識が圧倒的だという実情を踏まえると、たとえ4名でも十分な成果なのかも知れない。
ところで、先述した「悪い話」とは何か―。これは主に3点ある。
【1】一切の審判道具は自己負担で揃えなければならない。 ユニフォーム類はもちろん、球審用のマスクやプロテクターなど一切の道具は貸与制ではなく、自前で用意しなければならない。審判員は基本的にボランティア活動であり「仕事」ではない。また、道具は「自分に合ったものを何十年も使う」というのが前提なので、貸与制は馴染まないのだ。
そのうえで、最廉価のものを揃えたとしてもシミュレーションでは5万円以上の出費となり、これに驚いた声は多かった。
【2】あまりに複雑な野球のルール テレビでプロ野球や高校野球を観ているだけではなかなか理解されないが、数あるスポーツの中でも野球のルールがいちばん複雑だと言われている。ルールは毎年改正(追加・修正・削除)され、未だに「完成されていない」のだ。
プロ野球の監督や選手でさえ「半分も知らない」と言われるルールを覚えなくてはならないのが審判であり、そのための猛勉強が必要である。
【3】「メカニクス」の存在 これもテレビ観戦だけで審判をイメージしていた人にはショックが大きかったようだ。例えば塁審の場合、自分の担当塁だけを見てアウトかセーフかだけを判定する「簡単な作業」だと思われがちだが、走者の状況と打球の行方によっては二塁審なのに一塁へ走ったり三塁へ走ったりしなければならない。
そういうパターンが実に128通りあり、ルールより先にまずはこれを頭に叩き込む必要がある。(参考リンク:
審判メカニクス)
…と、せっかくの意欲を削ぐような話が多かったわけだが、審判になった後で「聞いてなかった。やっぱり辞める」と言われるよりはずっとマシなわけで…。
事実、説明会の後に何人もの参加者から電話があったが、異口同音に「もっとお気楽な世界だと思っていたが、審判がこれほど大変だとは知らなかった。自分には無理そうなので、諦めます」と話しており、200ページを超えるルールブックやメカニクスを覚えるのは負担に感じたようだった。
う~む…やはり審判界では「人材の発掘」自体が永遠のテーマなのか…
